「グレートローテーション」は、安全資産からリスク資産への大規模なマネーの移動で、「大転換」と呼ばれている。マネーの投資先は、「リスク資産」と「安全資産」に大別できる。リスク資産は価格変動が大きく、当たれば大きいが、投資資金がゼロになることもあるもので、株式や不動産、金や原油などの商品市場が典型だ。一方の安全資産は、価格変動が小さいローリスク・ローリターンの投資で、国債などの債券が中心となる。リスク資産は剛球派、安全資産は軟投派というわけだが、投手のローテーションがチーム状況や対戦相手に左右されるように、どちらが好まれるかは経済情勢に左右される。マネーの流れが大きく変わるのがグレートローテーションなのだが、通常は安全資産からリスク資産へ、つまり軟投派から剛球派への投手交代が行われた場合に使われている。
グレートローテーションの典型が、1980年代半ばの日本で起こったバブルだ。大量のマネーが株式や不動産などのリスク資産に流入し、激しい値動きを繰り返しながら急上昇していく。リスク資産の大胆な投球に人々は熱狂したものの、90年代に入ってバブルが崩壊すると、債券(特に国債)などの安全資産へのマネー移動が急速に進む。その後、景気の低迷とデフレが続いた結果、安全資産が優位な状況が続いた。ノックアウトされた剛球派のA君のように、リスク資産はベンチでグレートローテーションを待ち続けて、20年以上が経過したのだ。
これに対して、グレートローテーションが続いているのが中国だ。株式や不動産に加えて貴金属などへもマネーの流入が続き、時折失速することはあっても、リスク資産が投球を続けている。アメリカは2000年代の初めまではグレートローテーションが続いていたが、08年のリーマンショックで状況が一変し、国債などへマネーが逃げ込んだ。しかしその後は、景気の回復に伴って、リスク資産へのマネー流入が増え始め、グレートローテーションの兆しが見えている。
こうした中、グレートローテーションが世界的に起こるとの予測が出ている。ドナルド・トランプが大統領選挙で勝利した直後から、株式に買い注文が殺到する一方で、国債の売り注文が増えている。こうした動きはトランプが大統領に就任した後も継続するというのである。
筆者の学校の野球部で、ようやく登板の機会をもらった剛球派のA君だったが、気合が空回りしてストライクが入らず、早々に降板してしまった。再びマウンドに立とうとしているリスク資産は、期待に応えられるのか? グレートローテーションの行方に、注目が集まっている。