そのように「扉」になりながら民衆の底力を体現していった人ともいえるのではないかと思います。
アウトカーストの人たちとともにインド独立を目指したガンディー、社会から排斥されていた黒人たちを率いて公民権運動を進めたキング牧師などにも、同じことがいえます。こういった人たちも、今後の対談の中で取り上げていきたいですね。
未来に向かって何かをやるときには、そうして歴史と深くつながることが不可避だと思います。現在の知恵だけで未来に足を進めようとするのは、とても危険です。
中島 おっしゃるとおりです。過去のリーダーたちの歩みを振り返ることで、政治というものの本質をあぶり出し、私たちが目指すべき「いのちの政治学」のすがたを見出したい。そこから、いのちを見捨ててきた今の政治に代わる、もう一つの選択肢が見えてくるのではないかと思うのです。
*この連載は、『いのちの政治学 リーダーは「コトバ」をもっている』というタイトルで、21年11月5日に集英社クリエイティブより単行本として発売されました。中島岳志さんと若松英輔さんが、5人のリーダーたちの歩みを振り返り、「いのちの政治学」について考えます。連載にはなかった“語りおろし”「終章」もあります。詳しくはこちら
石牟礼道子
いしむれ・みちこ。1927~2018。作家。熊本生まれ。水俣病への関心を深め、患者たちの代弁者として『苦海浄土 わが水俣病』(69年)をまとめあげる。『苦海浄土』の連作を加筆し、04年「石牟礼道子全集」に収載。その他、『十六夜橋』、『はにかみの国 石牟礼道子全詩集』などの作品がある。
原民喜
はら・たみき。1905~51。作家。広島生まれ。慶應義塾大学卒。44年に妻が病死。45年広島に疎開し、被爆。被爆体験をつづった『夏の花』を47年に発表。51年に鉄道自殺。代表作に『災厄の日』『心願の国』などがある。