石田 そうですね。
鴻池 いつから、応募してました?
石田 断続的に応募していた感じです。最初に応募したのは、20歳ぐらいのときです。2回目は25歳で送って、みたいな感じです。毎年、送っていたわけではないです。デビューまでに4回ぐらい送ったかな。
鴻池 小説家になりたいと思ったのは小さい頃からですか?
石田 いえ、大人になってからで、20歳ぐらいのときです。大学生のときに勉強してなくて暇だったんで、小説書いてみたんです。
鴻池 ミステリーが好きだったんですか?
石田 ええ、特に髙村薫さんがめちゃくちゃ好きでした。応募し始めたときは、髙村さんの『黄金を抱いて翔べ』が好き過ぎて、その影響をモロに受けた小説を書いて送ってたんですけど全然ダメで……。髙村さんの真似ではなくて、自分なりに主人公の内面を書いた作品を送ったら「大阪女性文芸賞」という、いまはなくなっちゃった地方の文学賞に通ったという感じですね。
鴻池 純文学の新人賞に応募したのは『すばる』が初めて? 『すばる』に送る前も、純文学読んでないんですね? たとえば過去の「すばる文学賞」の受賞作を読むとか。
石田 『すばる』が初めてで、純文学は読んでないですね。過去の受賞作を読んでも何の参考にもならないと思ったんです。デビューはもう運でしかない。
鴻池 確かに。僕もデビューってのは運だと心底思いますね。あと、石田さん、タイトルカッコいいですよね。デビュー作の「我が友、スミス」なんてインパクトありますけど、タイトルは最初につけるんですか?
石田 書き始めた序盤にパッと思いつく感じです。というか、タイトルも髙村さんのパクリかも(笑)。「我が友、スミス」、「我が手の太陽」の「我が」は、きっと髙村さんの『わが手に拳銃を』、『我らが少女A』がカッコいいから(笑)。
純文学は〝ムラムラしている人〟を描くもの!?
石田 実は私、あんまり純文学にいいイメージを持っていないんですよ。さっき、鴻池さんは純文学に自由なイメージがあるとおっしゃったけど、一見、自由に見えて色んな縛りがある気がするんです。私のイメージでは、純文学は〝人間を人間らしく書かなきゃいけない縛り〟がヤベェなと。
鴻池 そんな感じがあります?
石田 うん。私は書いて編集者さんに出すと、「石田さんの書いている人間はロボットみたいで、全然、人間の気持ちがわからない。人間らしさがないよね」みたいなことを言われがちなんです。
鴻池 えっ、ウソ!
石田 すごい言われるんです。あまりにも言われ過ぎて、さいきん卑屈になって腐ってきてる(笑)。「そもそも、そんなに人間を人間らしく書かなきゃいけないの?」ってすごい疑問に思うんです。
鴻池 俺は読んでいてそう思わなかったけどな。人間らしい感じあるけど、石田さんはあまり心理描写しないからですかね?
石田 わからないです。確かに心理描写をしないで行動で登場人物の内面を表すほうが好きではあるんですけど。編集者さんには、心理描写を詳しく書かないと、読んでいる人は登場人物が何を考えてるかわかんないと言われる。
鴻池 十分、伝わるけどな。
石田 ほんとですか。
鴻池 この(本を手に取って)『黄金比の縁(えん)』とかめっちゃ面白かったですよ。
石田 読んで頂いてすいません。「本薄っ!」って思いました? もしくは「軽っ!」とか。
鴻池 いや……。(本を開いて沈黙)
石田 あっ、思ってる(笑)。
鴻池 いや、そんなことない(笑)。好きな表現があったんで探してたんですよ。石田さんの作品は、ところどころで面白い表現がありますよね。すごい笑えるんだけど、自分で書きながら笑ってるんじゃないですか?
石田 自分で言うの恥ずかしいんですけど、「フッ」てすごい笑ってます。自分で書いて読んで、「アハハハ」と5分ぐらい笑ってるときもあります。世話ねぇなみたいな。
鴻池 やっぱり(笑)。
石田 一生、てめぇでやってろって感じですよね。
鴻池 いや、でもわかる。創作ってそういうものですね。
石田 さっきの純文学の縛りについてですが、私の偏見かもしれないけど、「性」について書かなきゃいけないっていう縛りがありませんか。
鴻池 ああ、そうか。
石田 編集者さんに「この主人公は恋人いないの?」とか「年頃の主人公なのに恋人いないのはおかしくない?」とかよく言われます。
鴻池 マジで! そんなこと言われるんだ。
石田 でも、巷の純文学を見てるとけっこうみんなムラムラしてんなぁ~って。
鴻池 ははは(笑)。