なぜなら、このところの地球世間においては、ドイツを対象にした「出る杭バッシング」がちょっとした流行になっているからです。「アベノミクス」騒ぎや特定秘密保護法案など、安倍晋三政権の実に気掛かりな政策運営に気を取られているうちに、欧州情勢も少々不穏当な雰囲気を呈してきています。
「出る杭ドイツ」へのバッシングのきっかけをつくったのは、アメリカの財務省でした。彼らの言い分によれば、ドイツは経常収支の黒字をため込み過ぎている。ドイツは、自分だけ輸出を伸ばしてせっせと稼いでいる。そのくせ、自国の内需拡大でグローバル経済の成長に貢献しようという姿勢が微塵(みじん)もみられない。これは実にけしからん。
アメリカのドイツへの苦情は、おおむねこのような趣旨のものです。
アメリカのこの出方に刺激されて、ユーロ圏内でも、ドイツの経済運営に対する苦情・注文が一気に声高になってきました。
ドイツはユーロ圏内で突出的な優等生の位置付けにあります。ユーロ圏の他の国々は、誰もが、ドイツの経済力に依存しています。ドイツ様々状態です。誰も、ドイツ無しでは生きていけない。
ところが、だからこそ、他のユーロ圏諸国にとって、ドイツほど鼻持ちならない存在はありません。それでも、お世話になっているのですから、あからさまには悪口を言うわけにいきません。
こんな具合で、何ともフラストレーションがたまっていたところに、外部の友好筋からドイツ批判が噴出したわけです。
そこで「よっしゃ」とばかりに、欧州委員会がドイツの経済政策に関する調査に乗り出しました。ユーロ圏全体のために、もっと内需拡大に励むべし。あわよくば、そうした「改善勧告」をドイツに突き付けたい。そういう構えです。
当然ながら、ドイツ側は憤然として反撃に出ています。彼らとしてみれば、こんなバカな話はありません。ふざけるなと言いたいでしょう。
自分たちは、万事を上手く切り盛りして、成果を上げている。輸出競争力が強いのは、ドイツ企業による相応の努力の成果に他ならない。世界が欲しがるモノをつくっていることの、どこが悪いのか。もう少しさぼればいいのか。ドイツがさぼって金欠になれば、困るのはあんたらの方だろう。今度ギリシャが資金繰りに窮したら、一体誰に泣き付くつもりか。
ドイツとしては、こんな風に言い募りたいところです。
ユーロ長屋のこの内輪もめは、なかなか深刻なものです。
なぜなら、求心力の根幹に関わる問題に火がついてしまったからです。いよいよ、長屋そのものの解体時期が迫ってきている。そう言えそうな状況です。日本長屋内の政治家たちの動向も、引き続き厳しい監視が必要です。
しかしながら、同時にユーロ長屋の土台の揺れ方からも、目を離すわけにはいきません。