パリで黄色いベストの人々が大奮戦していますね。皆さんは彼らをどう思われますか?
彼らは一般市民です。一部、怪しげな扇動屋の類いも含まれているようですが、基本的にはごく普通の市民たちが大勢を占めています。誰言うとなく、いつの間にか結集し、巨大なデモ隊と化しました。そして大いに気炎を上げてきました。
当初は、もっぱらエマニュエル・マクロン大統領が打ち出した燃料税の増税に反対してのデモでした。ですが、そうこうするうちに日頃のうっ憤の全てが前面に出てきた、大々的な「マクロン降ろし」の動きにエスカレートしたのです。
黄色いベスト組の行動は、そのあまりの過激さが非難を呼んでもいます。彼らに行く手を阻まれて、難儀をする人々が多発しました。子供を病院に連れて行くことが出来なかったママがいました。死者も出ました。決して、彼らの行動の全てを手放しで褒めることは出来ません。
ですが、それにしても、あの勢いと粘り強さには、驚嘆せざるを得ないものがあります。何しろ、ついに政府に燃料税の引き上げを断念させてしまったのです。他にも譲歩を勝ち取っています。このままでは、パリがめちゃくちゃになる。国家の安泰が危険にさらされる。そのような事態を放置するわけにはいかない。だから、イエローベストたちの言うことを聴く。フランス政府はそのような声明を出しました。
国家の安泰を脅かすほどの騒動を起こす。その市民パワーには、やはり、頭を下げたくなります。さすがは、市民革命中の市民革命を成し遂げた人々の子孫たちです。体制側の者たちを震え上がらせる。追い詰められた気持ちにさせる。これらのことを成し遂げられる市民たちは、民主主義の力強い担い手としての側面を持っている。そのことを否定出来ないと思います。
今回の展開には、多分にマクロン政権の体質に起因するところがありました。というよりは、エマニュエル・マクロン大統領自身の体質と言った方がよさそうですね。いかにもグローバルエリート臭さが強い彼には、庶民の痛みが分からない。完全にそのように見られてしまっています。無神経なヤツが繰り出す弱い者いじめ政策を受け入れてたまるか。この思いが、黄色いベストの人々を駆り立てたのです。
黄色いベストの人々に組織はありません。特定の政治集団がリードしてきたわけではないのです。まさに市民が主役になっています。その姿は、安保法制の成立を阻止しようと立ち上がったあの2015年の日本の市民たちによく似ている。筆者はそう思います。ひょっとすると、日本がお手本になったのかもしれません。そうだといいと思います。
パリっ子たちが黄色いベストなら、日本の市民パワーは、あの安保法制の時のことを思い出して、黄色いちゃんちゃんこを身にまとってその意志を示す。そんな光景が目に浮かんできます。