統一地方選挙の前半戦が終わりましたね。いつも通り、悲喜こもごもの勝敗模様が伝えられ、映像として映し出されました。その中で、とても気になる発言が耳に留まりました。
テレビの前を通りすがりに小耳に挟んだという感じでしたので、具体的にどこの地域のどういう選挙結果だったのかは分かりません。それはさておき、めでたく勝ち抜いた候補者が勝利宣言をしていました。若い男性です。勝利宣言の趣旨は次のようなものでした。「この選挙では、自分たちのリーダーは自分たちで選ぶ、ということを皆さんが示されました。その意味で、この勝利は有権者の皆さんの勝利でもあると言えると思います」
この言い方、皆さんはどう思われますか。とても変だと筆者は思います。「自分たちのリーダーは自分たちで選ぶ」というくだりが実におかしい。なぜなら、こういう言い方をするということは、この人が自分を「皆さんのリーダー」だと思っていることを示しているからです。
市議会議員であれ、市長であれ、知事であれ、地方選によって選出される人々は、彼らを選出する人々の「リーダー」などではありません。彼らは有権者の代表ではあります。ですが、それは、あくまでも有権者が彼らにその任務を与えるからです。彼らは公僕です。つまりは、「しもべ」です。有権者の家来だと言ってもいいでしょう。そして、これは国会議員でも、総理大臣でも同じことです。
有権者が選挙を通じて選ぶのは「リーダー」ではありません。指導者ではないのです。民主主義体制における指導者は我々です。選挙を通じて、指導者である我々は政治家たちに使命を託します。役割を与えるのです。我々のために公的業務を行うサービス事業者として、しっかり働き、しっかり主権者である我々に奉仕する。この使命を誰に与えるか。どんな人々にこの役割を託すのか。その意向を我々が表明する。それが選挙というものです。こうして選択された人々は、仕えることが仕事です。リードすることが仕事なのではありません。
我々に選ばれた公僕たちがその活動に従事する時、彼らはリーダーとして行動するのではありません。政策の立案や実施を通じて、彼らが果たすべきなのは、レスキュー隊の役割です。民間の経済社会が困難に直面した時、その難所から我々を救出してくれる。そのために全身全霊を傾ける。その使命達成に失敗しないよう、常に訓練し、研鑽(けんさん)に励む。それが、彼らが心掛けるべきことです。
彼らはリーダーシップを発揮しなくていい。どうすれば、救助者として常に最高のパフォーマンスを発揮出来るか。寝ても覚めても、そのことを考えていて欲しいのです。
このことに、あのリーダーになったつもりになっている若者は、いつ気付くでしょうか。気付く時が来るでしょうか。先が思いやられます。