歌舞伎の登場人物は芝居の世界を離れ日常でも例えば「だれだれのように」と耳にしたり口にすることがある。いわば元祖ヒーロー・ヒロイン。そのキャラクターを知れば芝居もより楽しめる。(2009年 編集協力/伊佐めぐみ)
十六夜・清心(いざよい・せいしん)
大磯扇屋の遊女と鎌倉極楽寺の僧。女犯発覚のうえ盗難の疑いまでかけられ大ピンチの清心は、身重の十六夜と心中して死に損ない、時を経て盗賊鬼あざみの清吉・尼のおさよという姿で再会。ふとした悪心から仏道を捨てた二人には、重くのしかかる因果に自害する道しか残されていなかった。『花街模様薊色縫(さともようあざみのいろぬい)』(1859年初演)。
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河内山宗俊(こうちやまそうしゅん)
江戸城に勤める御数寄屋坊主(おすきやぼうず)、つまりは大名の世話係。人命救出を頼まれたので、偉い僧侶に化け大胆にも大名屋敷へ乗り込む。頬のほくろで正体を見破られても、まったく動じないのがこの男の魅力。別々に上演されることが多い、直侍こと片岡直次郎は弟分。『天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)』(1881年初演)。
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八ツ橋(やつはし)
吉原の花魁(おいらん)。田舎商人、次郎左衛門(じろざえもん)へ微笑んだばっかりに見染められて身請け話が持ち上がる。しかし情夫(いろ)の手前、一途な田舎者にした愛想づかしが逆に恨みを買い斬殺される。あばただらけの醜い男が、八ツ橋の笑みに恍惚となる場が見どころ。六世中村歌右衛門の笑みは今も語り草。『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』(1888年初演)。
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法界坊(ほうかいぼう)
募った浄財で私腹を肥やし、そのうえ無類に女好きな自堕落坊主。恋敵を陥れるべく、悪代官の手先となって小賢しく動き回るが、決まって踏むドジの数々が、根の残虐さよりも愛嬌ある悪人ぶりを印象づけて人気は高い。自分の掘った穴にはまってマヌケに死んだ後、直前に殺した姫の亡魂と一体化して悪霊となる。『隅田川続俤(すみだがわごにちのおもかげ)』(1784年初演)。
◆その他のミニ知識はこちら!【歌舞伎のヒーロー・ヒロイン列伝 Part 1】