「ワーカーズコープでは、働く人が主体的に自分の仕事を仲間と協同しながら創っています。その『働く』という部分を『学ぶ』に置き換えると、私たちが身につけた学びのあり方と一致するんです。そういう意味で協同できる面が多いと思います」
石本さんはそう考える。
冒頭で述べたように、440Hzは現在、株式会社の形をとっている。東京シューレに通った若者の働く場として、親たちが株主となって作られた会社の枠組みを引き継いだためだ。しかし、より多くの株を持つ者がより大きな発言力を持ち、利益を上げて配当金を出すという株式会社の形態は、本来、440Hzに合わない。「労働者協同組合」の方が、親和性があるのだ。
「ワーカーズコープにおいても、それぞれの事業はいろいろな悩みや当事者主体ならではの葛藤を抱えながら、運営されているように感じます。僕たちと似ている」
と、長井さん。石本さんも、
「同じ会議に出たり、一緒に仕事をしたりするなかで、互いのことがよりよくわかってきました」
と話す。
6月中旬、連合会の定期全国総会の会場には、440Hzの3人の姿があった。オンライン併用で行われる総会の運営サポートを任され、石本さんがカメラ、長井さんが演出、信田さんがテロップと音声を担当している。隣に座った連合会本部スタッフと言葉を交わしながらパソコンに向かう信田さん、高い位置に据え付けたカメラを台に乗って操作する石本さん、連合会の人たちと気さくに撮影の段取りを確認し合う長井さん。
会議終了後、連合会本部のスタッフに、「440Hzが作ったオープニングビデオ、とてもよかったです」と声をかけられた石本さんから、笑みがこぼれた。
「こうした出会いとつながりから生まれた仕事が増えています。仕事が多くなって、仲間が増やせるといいなと思います」
とはいえ、440Hzメンバーの収入は平均収入と比べるとかなり少なく、そのわりに労働時間が長い。それでも彼らはこう胸を張る。
「私たちは、働くことと生活することが一緒になっているんです。お金につながらなくても大事な仕事もある。何より人生の時間の使い方を自分自身で決めているので、楽しいんです」
株式会社 創造集団440Hz
設立年:2010年
人数:4人
事業内容:映像制作、デザイン、講座・講演・ワークショップなど
モットー:自分らしく、互いを尊重して働く