地域組織である無茶々園では、2004年に傘下の組織から役員を選出し、「地域協同組合無茶々園」(「地域協同組合」という法的枠組はない)を設立して以来、その組合員である農業・漁業生産者、会社従業員など全員がそこに出資し、1人1票の議決権を持って総会に参加、運営に関わっている。
「皆が主体性を持つことが重要」と大津さん。明浜町では、昔から「班」の仕組みがあり、面倒でも住民皆の話し合いを基本に物事を進めてきた。その田舎ならではの伝統に、大津さんが35歳の時から3年間出向していた「日本労働者協同組合連合会」(無茶々園も加盟)から得た学びも加わり、地域協同組合という地域内・外での協同の主体が形成されたのだ。
それは、私がよく知るスペイン各地の社会的連帯経済を形作る事業体のネットワーク組織にも似ている。大津さんが「協同組合の強みは、共感力と連帯」と語るように、持続可能なコミュニティを築く主体として、地域協同組合は存在感を示している。
主体的な市民がつながる社会へ
実験園から始まって、約50年。農事組合法人としての無茶々園には、今、明浜町とその周辺のみかん農家の7割以上が参加する。そして地域協同組合としての無茶々園は、四国エコネット(2005年に創られた愛媛県内の有機栽培生産者の集まり)や西日本ファーマーズユニオン(2007年にできた有機栽培をする西日本の生産団体のネットワーク)などを通じて、より広範な地域、世界を視野に入れた連帯を築くために動いている。創立当初から掲げる、「運動体」としての本領発揮だ。
2016年からは、廃校になった小学校の校舎内に事務所を置いて、ほかの事業所や団体も利用できる環境を整え、地域の自治を育む動きも始めた。その中には、人を呼び込むための観光事業や不動産事業、再生可能エネルギー事業なども含まれる。
片山さんは、未来にこんな思いを抱く。
「人間らしく、自由に生きていける世界がいい。それを創るには、百姓も都市の消費者も、人として、市民として、主体性を持ってつながらにゃいけん」
大津さんも、組織として安定した無茶々園の今後の課題は、片山さんたち創立メンバーがそうしてきたように、「未来に向けて、どれだけ主体的に新しい種を蒔くことができるか」だと感じている。
社会的連帯経済の核である「人と環境を中心にした」コミュニティづくりの運動を進めてきた無茶々園。その未来を担う世代が、主体的な市民として、社会全体へ、そして世界へと、どれだけ運動を広げていくことができるか。大いに気になる。
地域協同組合「無茶々園」
事業開始 : 1974年(実験園の開始)
組合員 : 200人
事業内容 : 農産品生産・加工、企画販売、地域福祉、技能実習生受け入れ
モットー : 大地とともに心を耕し、健康で安全な食べ物の生産を通して、真のエコロジカルライフを求めた町づくりを目指す。