11月ももう下旬だったが、陽の光は強く、暖かかった。暖かいというよりも車内は暑かった。暖房が効いていたか覚えていないが、少し汗をかきながら、眠った。
小倉駅からはモノレールに乗り、4つ目くらいで降りた。この日予約していた宿へ行くためだ。
大型連休の人も多かったのか、ホテルはどこも一杯で、キャンセル待ちをしていた旅館から空きが出ましたと連絡があったのは名古屋へ向かう5日前くらいだった。目的地から一番近い宿だったのでとても助かった。
宿へ着くとおじいさんが2階の部屋へ案内してくれた。風呂もトイレも共同の素泊まり3千円。古い民宿のような宿。気に入った。窓から午後の光が綺麗に入っていた。
玄関を出たところに大きな木があり、樹液がねっとりと出ていた。いい旅になりそうな予感がした。
宿の主人に「自転車ってあったりしますかね…」とダメ元で聞くと、「あるよ、空気が入ってないけど」とご主人。「空気入れるからちょっと待ってて」と言って空気入れを持ってきて入れてくれた。「あれ、鍵がないな、ちょっと待ってて」と主人が中に戻ると、いつの間にか知らない男の人が側に立っていた。こちらを見て「あなたここの人?」と急に聞かれ、「今日泊まる者です」と返すと、「あ、そう。最近ここらへん変な人多いから」と言われる。一瞬緊張が走ったが、主人が「あったあった」とにこやかに戻ってきてくれたので安心した。
貸してくれた小さな自転車で、近くの競輪場まで出かけた。
