映画を10分程度の動画や静止画として編集し、ナレーションや字幕であらすじを紹介する動画。個人やグループが製作者に無断で作成し、動画共有サイト「YouTube」などに投稿し、再生回数に応じた広告収入で利益を得るなどしている。著作権の侵害である上、結末まで紹介してしまうことで正規に視聴する人が減るため、映画製作者に被害を与えている。
特に、新型コロナウイルス感染が拡大し、在宅時間が増えた2020年春以降、投稿が増えたといわれる。背景には、映画を効率的に短時間で楽しみたいという需要が一定程度、存在することがあると指摘されている。
著作物を引用する場合は、論評などのために引用を行う必然性があることや、引用部分ではなくオリジナル部分の方が主であることなどの要件を満たす必要がある。その点、あらすじを見せることを目的に映像を編集する「ファスト映画」は、その要件を満たしておらず、著作権の侵害に当たる。また、DVDのコピーガードを外してコピーしていた場合は著作権の一つである「複製権」の侵害となる。
海賊版などの問題についての調査や関係者の対策共有を行う「一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構」(CODA)の調査によれば、21年6月14日現在で、「ファスト映画」を投稿しているアカウントの数は55、投稿された動画の数は約2100、再生回数は4億7700万回に上る。それによる被害総額は956億円に相当すると試算されている。
CODAによれば、たとえばアメリカ映画で、日本では公開されていないが本国ですでにDVD化されている作品の場合、それをコピーする、あるいはアメリカの映画館で盗撮されたものをアップロードするといったことも多いという。
21年6月には、「ファスト映画」を投稿していたとして、著作権法違反の容疑で初の逮捕者も出た(後に起訴)。男女3人が450万円以上の広告収入を得たという。著作権法違反は、有罪となれば10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科せられる。