2020年以降の新型コロナウイルスの感染拡大とともに起きた世界的な景気後退において、特に女性の雇用が危機にさらされている状況を指す言葉。女性の人称代名詞の「she」と景気後退の「recession」を組み合わせた造語である。
この時期の景気後退で女性の方が男性より打撃を受けたのは世界的現象。コロナ禍で多大な影響を被った飲食店や小売り店などで働く女性が多いためだ。特に日本では、非正規雇用で働く女性が深刻な影響を受けた。
その理由は三つ。第一に、非正規雇用で働く女性が多いこと。2022年までの数値をまとめた総務省の労働力調査(詳細集計、長期時系列表10)によると、コロナ禍が始まる直前の19年時点で、働く女性の56.0%が非正規で、男性(22.8%)の2倍以上。コロナ禍で非正規が雇用調整の対象となったことで女性が特に打撃を受けた。第二に、宿泊・飲食・生活関連サービス業などの業種に女性の働き手が多く、営業自粛によって解雇や雇い止め、シフト減などの打撃を被ったこと。第三に、家事・育児の負担の多くを女性が背負わされている状況のなかで、女性の方が離職や休職を強いられるケースが多かったことである。
こうした状況について、「男女共同参画白書」21年版は、「我が国においては、男女共同参画の遅れが露呈することになった」「潜在的にあったものの表面化してこなかった諸問題、例えば、経済的・精神的DV (配偶者暴力)、ひとり親世帯,女性・女児の窮状、女性の貧困等がコロナ下で可視化され、改めて男女共同参画の進展状況について疑問の声が上がるようになった」とまとめている。
上記の労働力調査によると、19年の非正規労働者は男性691万人、女性1482万人だったが、翌20年には男性が26万人減、女性が47万人減となった。22年に至っても非正規労働者の数は19年の水準に戻っていないが、特に女性は同年より50万人も減少したままである。世界各国でコロナ禍の沈静化とともに景気が回復する中、日本ではシーセッションが22年時点でまだ続いていることが、これらの数字から分かる。