正式名称はラモン・マグサイサイ賞。「アジアのノーベル賞」と呼ばれ、アジア地域の社会に貢献した個人や団体に贈られる。フィリピンの大統領ラモン・マグサイサイが1957年に亡くなった後に、その功績をたたえて設立されたもので、ラモン・マグサイサイ賞財団によって運営されている。第1回の授賞は1958年に行われた。以来、毎年、マグサイサイ元大統領の誕生日である8月31日に受賞者が発表され、11月にメダルと賞状、賞金(5万ドル)の授与式が行われる。
2008年までは、政府、社会奉仕、コミュニティ・リーダーシップ、ジャーナリズム・文学・創造的コミュニケーション芸術、平和と国際理解、新しいリーダーシップ(40歳以下のコミュニティー・リーダーに贈られる)という6部門が設けられていたが、現在は新興リーダーシップ部門を除いて固定した部門を置かなくなった。
主な受賞者には、チベット仏教最高指導者の第14代ダライ・ラマ(1959年受賞)やカトリック修道女マザー・テレサ(1962年)、韓国のジャーナリストの張俊河(チャン・ジュンハ、1962年)、バングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌス(1984年)、インドのシタール奏者ラヴィ・シャンカール(1992年)、中国の医師で政府による新型肺炎SARS感染拡大の隠蔽を告発した蒋彦永(しょう・げんえい、2004年)などがいる。
日本からは、映画監督の黒澤明(1965年)、作家の石牟礼道子(1973年)、国会議員・女性運動活動家の市川房枝(1974年)、国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子(1997年)、日本画家の平山郁夫(2001年)、NGO「ペシャワール会」現地代表としてアフガニスタンでの医療と治水事業を続けた医師の中村哲(2003年)、青年海外協力隊(2016年)などが受賞している。
2024年のマグサイサイ賞は、ブータンの若者支援団体「ローデン財団」創設者のカルマ・プンツォ、ベトナム戦争中の枯葉剤被害問題に取り組んだベトナムの医師グエン・ティ・ゴック・フオン、インドネシアの環境活動家ファルウィザ・ファルハン、タイの農村医療向上に取り組む「地方医師運動」、そして日本のアニメ映画監督である宮崎駿に贈られた。
ラモン・マグサイサイ賞財団は、宮崎監督について、「日本映画の巨匠、創造の天才、スタジオジブリの共同創設者。アニメーションを用いて人間の複雑な問題を探求し、自然、平和、そして人間性を擁護する示唆に富む映画で観る者を感動させる」と紹介している。
2024年11月16日、マニラでマグサイサイ賞授賞式が行われた。宮崎監督はメッセージを送付。太平洋戦争中に日本軍がフィリピンで多くの民間人を殺害したことを日本人は忘れてはいけないと訴え、受賞を「厳粛に受け止めている」とした。