多様な個性を尊重し、全ての人に公正な機会を与え、さまざまな背景を受容する社会や組織を目指すこと。多様性(Diversity ダイバーシティー)、公平性(Equity エクイティー)、包括性(Inclusion インクルージョン)の頭文字を取った言葉。「ディー・イー・アイ」と読む。
2020年に起きた白人警官による黒人暴行死事件から始まった「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)」運動をきっかけとして、アメリカの企業や大学、官庁でDEIの取り組みが広がった。
「多様性」は人種、国籍、宗教、年齢、ジェンダー、性的指向、障害の有無などの差異を認めることを、「公平性」はそうした異なった背景をもつ人々が同じスタートラインに立てるように配慮することを、「包括性」は人々がそのままで受け入れられることを意味している。
異なる背景をもった人が等しく能力を発揮できるようにするには、公平性を保証する土台をそれぞれにつくる必要がある。たとえば女性への生理休暇の保証や障害者にとってのバリアフリー環境などが、その一例である。DEIは、そうした多様で公正で、誰もが受け入れられる環境の実現のために、それぞれの企業や組織、社会で努力することを意味している。
DEIの推進が広がった背景には、グローバル化の進展や労働の多様化に対応する必要に加え、女性や少数派の登用が新しい発想や技術革新に寄与するという考え方がある。バイデン政権(2021年1月~2025年1月)はDEIを推進し、連邦政府職員にさまざまな背景をもつ人々を積極的に採用した。DEIは日本やヨーロッパでも取り組まれるようになった。
しかし2025年1月に成立したトランプ政権は「DEIに終止符を打つ」と宣言。各省庁のDEI関係部署を事実上閉鎖し、省庁のサイトから多様性を掲げた文言を削除するなど、連邦政府におけるDEIの推進を停止し、差別是正措置を否定している。こうした政府の方針転換の影響で、アメリカの民間企業の間でも、DEIの取り組みを取り止めたり、縮小させたりするなどの後退が広がりつつある。