国土の安全保障を目的として、国境の安全、貿易、税関、移民、金融などについての法的執行を行うアメリカの政府機関。2001年9月のアメリカ同時多発テロを受けて、テロ対策の強化などを目的に国土安全保障省(DHS)が発足した2003年3月に、それまでの関税局と移民帰化局を統合して同省内に設置された。
アメリカ内外に400以上の事務所を持ち、2万人の職員を擁する。年間予算は約80億ドル。主な業務の一つは、麻薬密輸、人身売買、暴力、金融犯罪、テロリストへの資金提供、知的財産に関わる犯罪などの安全保障に関わる捜査で、もう一つが、国家安全保障に危険をもたらして公共の安全を脅かす者に対する移民法の執行である。移民法の執行においては、法的な滞在資格を持たない移民を拘束し、国外追放するなどの権限を持つ。
2025年1月に発足した第2次トランプ政権は、「移民が治安を悪化させている」などと主張して、移民の摘発を強化することを掲げた。アメリカには法的資格を持たない移民が約1400万人存在するが、そのうちの約4割は亡命申請中であるなど、制度的な保護の対象者である。しかし同政権はICEに取り締まりの強化を指示し、アメリカのメディアによれば1日3000人、年間100万人の強制送還をノルマとして設定したといわれる。国土安全保障省のノーム長官はX(旧Twitter)に「クズどもを排除する」といった投稿を行った。
ICEは、重大な犯罪歴のない人などにも拘束の対象を広げ、各地で強引な摘発を進めている。マスクで顔を覆い、銃で武装して迷彩服に防弾チョッキという兵士のような格好のICEの捜査官らが、人びとを路上で追いかけ回し、ねじ伏せ、家に押し入るといった光景が繰り広げられるようになった。
亡命申請の手続きなどのために移民裁判所を訪れた人をその場で拘束することが常態化したほか、裁判所がすでに退去保留の命令を出している亡命申請者を国外追放したり(後に最高裁がアメリカへの連れ戻しを命令)、幼稚園から帰宅した5歳児を父親とともに施設に収容したりといった事例もある。
2026年1月7日には、ミネソタ州ミネアポリスで摘発と無関係な女性がICE職員に射殺され、さらに同月24日には、同じミネアポリスで、今度はICEに抗議した男性が射殺される事件も起きた。こうした暴走に対して、アメリカの各地で抗議行動が起きている。
国土安全保障省は2025年12月、1年間で約62万人を国外追放し、約190万人が自主的に出国したと発表した。