2015年9月に成立した安全保障関連法(安全保障法制、2016年3月施行)で規定された、自衛隊が出動できる状況をあらかじめ定義したもの。
「武力攻撃事態」とは、外部から日本への武力攻撃が発生した、あるいはその危険が切迫している状況を指す。この場合、自衛隊の武力行使は、もっぱら自国を防衛する「個別的自衛権」に基づくものとして、安全保障関連法以前から認められてきた。攻撃が予測されるに至った状況として「武力攻撃予測事態」も規定されており、この段階では防御陣地の構築や住民の避難などを行うことができる。
「存立危機事態」とは、日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある状況を指す。
この場合は、日本が直接に攻撃を受けていなくても、密接な関係にある他国と共に反撃を行う「集団的自衛権」を行使できる。
かつては集団的自衛権の行使は憲法9条に違反するというのが政府の解釈だったが、安倍政権が2014年7月に閣議決定で解釈を変更し、以下の「自衛の措置の新3要件」に基づき、集団的自衛権の行使が限定的に認められることとなった。(1)わが国への武力攻撃が発生した場合のみならず、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、(2)これを排除してわが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、(3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと。
存立危機事態には地理的規定はなく、そのように認定されれば、日本から遠く離れた場所であっても武力行使が可能となる。
「重要影響事態」とは、放置すれば日本に対する直接の武力攻撃に至る可能性があるなど、日本の平和と安全に重要な影響を与える状況のことで、その場合は、武力行使ではなく、「合衆国軍隊等」への輸送や補給といった後方支援を行うことができる。「等」とあるように、米軍以外への支援も可能である。後方支援の具体的な内容としては、弾薬提供や給油などが想定されている。存立危機事態と同じく、地理的規定はなく、日本から遠く離れた場所であっても可能だ。
安全保障関連法が定めた「事態」としては、他に「国際平和共同対処事態」がある。日本の安全に対する直接の影響がなくても、国連決議に基づく多国籍軍への後方支援のために自衛隊を「現に戦闘が行われている場所」以外に派遣することができる。
存立危機事態で自衛隊を海外に派遣するためには、政府は武力行使の他に手段がないことなどを説明する「対処基本方針」を閣議決定し、国会の承認を得なくてはならない。また、重要影響事態と国際平和共同対処事態での派遣については、政府は支援内容や派遣期間などを盛り込んだ「基本計画」を閣議決定し、国会の承認を得なくてはならない。ただし、存立危機事態と重要影響事態では、緊急の場合は事後承認も認められる。
なお、上記のような「事態」や要件を定めた安全保障関連法については、憲法違反であるという指摘も根強く、日本弁護士連合会は「政府が憲法第9条の解釈を変更し、これを踏まえて法律によって集団的自衛権の行使を容認することは、憲法の立憲主義の基本理念、恒久平和主義及び国民主権の基本原理に違反する」との会長声明を同法成立直後に発している。