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月経(生理)は、女性のからだにのみ備わった、子どもを産むためのシステムである。思春期から約40年間、女性は通常1カ月に一度、腟から出血する期間(3〜7日)を過ごす。
月経前や月経中には多くの女性が腹痛やだるさ、イライラ、頭痛、強烈な眠気など、自分ではどうすることもできない様々な症状を体験する。これらの症状の重さには個人差があり、人によっては起き上がれないほどの痛みを感じることもあるが、月経中の辛さについては周囲の理解を得られにくい。
子どもを産む産まないにかかわらず、女性の心身は月経によって様々な影響を受ける。月経中のからだの中では何が起こっているのかを知り、女性の心身の変化への理解を深めてほしい。(監修・西弥生医師〈産婦人科専門医。桜の芽クリニック院長〉)
〈月経と女性のからだ〉
「月経は、子どもを産むための準備をする一連のプロセスです」と話すのは、産婦人科専門医で東京・高田馬場「桜の芽クリニック」院長の西弥生先生。
「10〜15歳で第二次性徴期(思春期)に入って体格が発達し、子宮や卵巣が成熟していくと初潮(初経。最初の月経)が始まります。『子どもを産むための準備』というのは、月に一度の周期で卵子を育てて排卵し、精子と出会った受精卵がふかふかの新しいおふとんに着床できるよう、子宮内膜を良い状態に整えてあげるというイメージです。
受精や受精卵の着床がなければ、子宮内膜を排出し、一度リセットして、また次の排卵に備えます。『月経なんて、なければいいのに』と思う人もいるかもしれませんが、やはり、おふとんは定期的に干した方が気持ちがいいわけですし、子宮内膜をリセットすることで子宮内膜増殖症や子宮体癌などの婦人科系の病気を防ぐこともできるんですよ。
女性にとって、月経は自分の体調を知るバロメーターと言われます。たとえば、強いストレスや無理のあるダイエットは、月経がストップする原因のひとつです。『楽でいい』と放置していると心身に大きなダメージを与えますし、不妊にもつながっていきますから、3カ月以上月経がないようであれば、婦人科に相談をしてください。また、月経痛がひどくなる、経血量が急に増える(夜用ナプキンで2時間持たないなど)、不正出血を繰り返すなどの月経の変化は婦人科系の病気のサインということもあります。いつもと違う症状があったら、早めに診察を受けるようにしましょう」
〈月経と女性の生殖期〉
女性の生殖期は一般的に初潮から閉経(40〜50歳代で卵巣の機能が低下し、排卵・月経が起こらなくなること)までを指す。
卵巣内で排卵まで卵子を育てる球状の組織を卵胞(らんぽう)といい、この元となる原始卵胞の数は胎児のときが最大で、女性は生まれたとき卵巣に約200万~400万個の原始卵胞を持っている。その大半は年齢を重ねるとともに自然に消滅していき、思春期には約20万〜30万個にまで減少する。月経が始まってから一生で排卵されるのは400〜500個、さらに原始卵胞の数は生殖期間中も減っていき、だいたい50歳を過ぎた頃に原始卵胞はゼロに近づき閉経を迎える。
「月経のしくみ全般について言えることですが、排卵のメカニズムについては、医学的に解明されていないことがたくさんあります。たとえば、なぜ排卵する卵子は1個だけなのかということや、排卵される卵子がどのように選ばれているのかということについては、はっきりしたことはわからないのです。よく『いい卵子』『悪い卵子』などと言われたりしますが、確かに年齢が卵子の質を低下させるのは周知の事実です。しかし、年を重ねることの何が卵子の質を左右するのかも実は説明できないのです」(西先生)
〈月経周期〉
月経周期の開始日は月経が始まった日(出血が始まった日)で、通常28〜35日後に次の月経が始まるまでの期間を1周期と数え、4〜5日の変動であれば正常とみなされる。