精子はどうやって卵子と出会うのか? いつの時点で「妊娠した」ことになる? 妊娠中に気をつけるべきことは? 出産予定日ってどうやって決まる? 赤ちゃんはどうやって出てくる? 産後の過ごし方のポイントは? あなたは妊娠や出産について、どのくらい知っているだろうか。さまざまな情報が入り乱れる中、まずは基本的な妊娠・出産のメカニズムについて確認しておこう。(監修・西弥生医師〈産婦人科専門医。桜の芽クリニック院長〉)
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〈受精のしくみ〉
精子の状態も関係するため一概には言えないが、一般に妊娠する確率が高いのは排卵2日前から排卵後1日の3日間。排卵は、月経周期が安定している人の場合、月経周期の10〜18日めぐらいの間に起こる(個人差がある)。
排卵が近くなると、子宮頸管(けいかん)粘膜からアルカリ性の分泌液(おりもの)が放出され、通常は細菌の侵入や繁殖を防ぐため酸性を保っている腟(ちつ)を精子が通過しやすくする。腟の中に放出される精子は2億〜4億個とされるが、個人差があり、日によっても変化する。精子は女性の腟から子宮へとのぼり、卵管を通り、排卵された卵子と卵管膨大部で出会って受精する(ここまで数十分程度)。子宮内にたどりつくのは2万〜1万個、卵管にたどりつくのは600〜400個、卵管膨大部では200〜60個にまで減少する。卵子と受精できる精子は1つだけだが、早く到達した精子が受精できるとは限らない。
「精子のスピードはそれぞれ違い、ゆっくり進む精子もあれば、飛ぶように速い精子もあります。ただし卵子の中に入れる精子は『先着順』というわけではなく、精子がちゃんと成熟しているかどうかなどの『質』も関係します。卵子を取り巻く殻のような透明帯を突破するためには、精子の頭部(先体〈せんたい〉)にある酵素で透明帯を分解し、卵子の細胞膜と融合すること(「先体反応」)が必要です。先体反応が起こった瞬間に他の精子はブロックされます。イメージとしては、精子が卵子にたどりついても最後に1枚壁があって、その壁を複数の精子が叩いて突破しようという感じです。最初に壁を破れなかった精子は自然に消滅していってしまいます」(西先生)
〈妊娠の成立と受精卵の発達〉
受精卵(胚)は細胞分裂を繰り返して細胞数を増やしながら、繊毛(せんもう)という卵管内部の細胞組織に運ばれて卵管内を5日ほどかけて転がっていき、胚盤胞(はいばんほう)となって子宮内膜に着床する(妊娠成立)。
胚盤胞の中には、胎盤などを作っていく外側の細胞と、胎芽(たいが)(後に胎児となる。妊娠7週6日まで胎芽と呼ばれ、妊娠8週0日以降は胎児と呼ばれる)に成長する細胞があり、胎盤と胎芽はへその緒(臍帯〈さいたい〉)にあたる細胞でつながっている。
黄体
卵胞(卵巣で排卵まで卵子を育てる球状の組織)から卵子が飛び出した後に残る抜け殻のこと。黄体からはプロゲステロン(黄体ホルモン。2種ある女性ホルモンのひとつ)が分泌される。受精卵が着床しなければ、黄体はやがて白体となり消滅する。