胎児は魚のような形から人間らしい形に成長し、妊娠11週では身長約5センチ、体重約20グラム。
※中絶をする場合、12週に入ると分娩を人工的に誘発する方法がとられるので、母体へのリスクが高くなる。
「自然妊娠の場合、妊娠しているかどうかわからない妊娠初期に、タバコやお酒、レントゲン、薬など、赤ちゃんに良くないとされるものに接することもあるでしょう。基本的にはかなり大量でなければ生まれてくる赤ちゃんの異常にはつながりません。影響が出る場合は、ほとんどは胎児が育つことができず、早期流産となるでしょう。
目安としては胸のレントゲンなら80枚ぐらい撮らなければ胎児に影響するほどの被曝にはなりませんし、アルコールについても1日1〜2杯程度の量であれば、まず大丈夫です。喫煙は胎盤につながる血管が細くなって胎児の発育を遅らせたり、妊娠高血圧症候群の原因になったりしますが、これも『もしかしたら妊娠したかも?』と思った時点で禁煙すればそれほど心配する必要はありません。いずれにしても、妊娠に気づいた段階でやめれば通常はセーフです」(西先生)
妊娠12〜15週になると、下腹部がふくらんでくる。胎盤は完成し、つわりも治まって、食欲が出てくる。胎児は身長15〜18センチ、体重120グラム程度に成長、心音が聞こえるようになり、性別がはっきりする。
「この時期までに意識してほしいことのひとつが葉酸の摂取です。葉酸はおなかの赤ちゃんの発達に必須の栄養素で赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを軽減しますし、妊婦さんの貧血予防などにも効果的なので、特に12週に入るまでは葉酸を1日400〜600マイクログラム摂取することが推奨されています。これはほうれん草1把分にあたる量です。この時期は妊婦用のサプリメントを利用するのが無難ですが、12週以降は野菜を多めに摂るなど、食事からでも必要な量は十分に摂取できます。
また、妊婦は貧血になりやすいので、普段から赤身の肉や魚など鉄分が多い食品を多めに食べるようにしましょう。もし妊婦健診で貧血と言われたら、足りない分は処方される鉄剤を飲むなどして補ってください」(西先生)
・妊娠中期:妊娠16週0日〜27週6日
妊娠16〜19週になると、下腹部のふくらみ、乳房が大きくなるなど、体型の変化が目立ち始める。乳腺から黄色い分泌物が出ることもあるが、心配はいらない。胎児の身長は約25センチ、体重約270グラム。胎動を感じ始める。
妊娠20週から産後12週までは、妊娠高血圧症候群(妊婦20人に1人の割合で発症し、重症になると胎盤の機能が悪化し、胎児に十分な酸素や栄養が行かず、早産、未熟児、死産になることもある)に注意。塩分を控え(1日7〜8グラムを目安に)、体重を増やしすぎないように。
妊娠中期の終わり頃になると、おなかが前にせり出して腰や背中が痛んだり、便秘がちになったりする。痔、静脈瘤に注意。胎児は身長約36センチ、体重は約1000グラムぐらい。
※母体保護法により、子宮外生育が可能とされる妊娠22週以降になると人工妊娠中絶は認められなくなる。
「妊娠中の栄養指導は体重の増えすぎに注意するというイメージが強いですが、最近は『もっと体重を増やしましょう』と指導することが増えています。理由としては、自分の体型に対する意識が強くなってきていることが挙げられます。栄養が摂れるにもかかわらず、あえてエネルギーを摂りすぎないため、望ましいと言われている体重増加に至らないのです。その結果、小さめの赤ちゃんが生まれてくるということが起こりやすくなるのですが、低出生体重児は大人になったときの生活習慣病のリスクが高い(糖尿病、高血圧など)ということが明らかになっています。赤ちゃんの将来の健康も考慮して、かかりつけ医の指導を受けながら妊娠時から出産直前までの体重増加は10〜12キログラムの範囲になるようにしましょう」(西先生)
・妊娠後期:妊娠28週0日以降
おなかはますます大きくなり、手足がむくみやすくなる、食欲がなくなる、動悸や息切れがするなどの症状が増える。体調が悪いときは無理せず横になり、異常があれば病院へ。この頃から子宮が少しずつ収縮しながら子宮の出口が広がっていき、おなかの張り(腹部が固くなる、重くなる、痛くなるなど)を感じるようになる。健診で子宮の出口が広がっていなければ、1時間に1〜2回(妊娠32週以降は1時間に2〜3回)おなかの張りがあっても、異常ではない。妊娠37週以降は、いつでも出産できるよう準備しておく。
妊娠後期の終わり頃には、胎児は身長約48〜50センチ、体重3000〜3200グラムになる。陣痛(出産直前に起こる子宮収縮と、それに伴う痛み)などの兆候に注意。
・予定日より早い出産、遅い出産
胎児の平均在胎日数が280日プラスマイナス15日であることから、分娩予定日は妊娠40週に設定されており、37週0日〜41週6日を正期産と呼ぶ。早産(妊娠22週以降から37週未満までの出産。全分娩の5%程度)では生まれた赤ちゃんの生存率が低くなる他、赤ちゃんに障害が発生したり感染しやすくなったりするリスクが高くなるため、切迫早産(早産となる危険性が高い状態)と診断されたら、早産を避けるべく、医師の指示に沿って過ごす。健診を受け、出血やいつもと違うおなかの張りを感じたら診察を受ける。
過期産(42週以降の出産、全分娩の1%程度)では、羊水の減少や混濁、巨大児などのリスクがあるため、医療介入により過期産になる前に分娩を行うことが多くなっている。
〈出産の経過〉
・出産の前兆
出産が近づくと子宮が収縮することで赤ちゃんを包んでいる卵膜がはがれ、おしるし(血液の混じったおりもの)が出る。量や色には個人差がある。
黄体
卵胞(卵巣で排卵まで卵子を育てる球状の組織)から卵子が飛び出した後に残る抜け殻のこと。黄体からはプロゲステロン(黄体ホルモン。2種ある女性ホルモンのひとつ)が分泌される。受精卵が着床しなければ、黄体はやがて白体となり消滅する。