剥く練習で気をつけてほしいのは、少しずつ無理し過ぎない程度に行い、剥いたら必ず戻すということです。剥けない包皮を無理に剥くと、戻らなくなって亀頭が締め付けられて腫れてしまう「嵌頓(かんとん)包茎」になります。嵌頓包茎は、放置すると腫れがひどくなって治りにくくなるので、早めに病院を受診してください。症状が軽ければ手で包皮を戻すこともできますし、腫れた包皮の中の水を抜く処置で包皮をもとに戻すことができるようになります。
若い男性は性感染症と精巣腫瘍に注意
男性の一生の中で20~30代はいろいろな病気に最もかかりにくい年代だと思います。ただし、性行動が活発な時期ですから、性感染症に注意することは必要です(参照:「性知識イミダス:性感染症の基礎知識」)。激しい性行為や無茶な格好でのマスターベーションで、勃起中の陰茎が折れてしまう「陰茎折症(せっしょう)」も若いときならではと言えるかもしれません。これは陰茎内部の陰茎海綿体の周囲にある白膜(はくまく)が断裂する外傷で、外科手術が必要になります。また、なんらかの原因で勃起や射精ができない「性機能障害」による男性不妊の相談が多くなってくるのも、この年代の特徴です。
もし、子どものときにおたふく風邪(流行性耳下腺炎)になっていなかったり予防接種を受けていなかったりするのであれば、おたふく風邪が周囲で流行しているときには感染予防に努めてほしいと思います。大人になってからおたふく風邪にかかったことが原因で「精巣炎」になると、一時的に精子をつくる機能が低下したり、精子の通り道が閉塞したりする可能性があります。
他の年代に比べ20~30代男性で発症しやすい傾向がある精巣がんは、10万人に1人の罹患率と比較的稀ながんです。精巣がんの主な症状は、痛みを伴わない精巣の腫れやしこりです。痛みがないのにだんだん精巣が大きくなってくるような場合には、すぐに泌尿器科を受診しましょう。精巣がんは転移があっても化学療法が効きやすく、比較的予後が良いのですが、早期発見、早期治療が一番です。
比較的稀な疾患ではありますが、「持続勃起症(持続陰茎勃起症)」も注意しなければなりません。持続勃起症とは、「性的刺激・性的興奮と無関係である勃起が4時間を超えて持続している状態」で、虚血性(静脈性)持続勃起症と非虚血性(動脈性)持続勃起症に分類されます。強い痛みを伴う虚血性(静脈性)持続勃起症は、薬物(向精神病薬、降圧薬、勃起不全の治療薬など)や、血液がん(白血病や悪性リンパ腫)が原因であることが多い疾患です。虚血性(静脈性)持続勃起症と診断されたら、早急に治療を開始する必要があります。
一方、虚血性(静脈性)に比べて症状の軽い非虚血性(動脈性)持続勃起症の多くは、会陰(えいん)部(外陰部と肛門の間の部分で、男性の場合、陰嚢の後ろから肛門の間のこと)の打撲(外傷)後、しばらく時間が経過してから発症します。非虚血性(動脈性)持続勃起症と診断された場合には、治療を急ぐ必要はありません。患部の圧迫や冷却などの処置で経過を見ることが多いですが、改善しない場合は、打撲(外傷)により出血している陰茎内の動脈をふさぐ手術(塞栓〈そくせん〉術)を行うこともあります。
持続勃起症は50歳未満に多く、特に血液がんによる虚血性(静脈性)持続勃起症は若年層に多いため、小児で痛みを伴う勃起が持続する場合は、血液がんの存在を疑う必要があります。
30代頃から見られるLOH症候群
いわゆる「男性更年期」と呼ばれる「LOH症候群(late-onset hypogonadism syndrome、加齢男性性腺機能低下症候群)」は、加齢によって男性ホルモンのテストステロンの分泌量が下がることで起こるさまざまな心身の症状を指します。女性の更年期と同様に、うつなどの精神症状や倦怠感、不眠、発汗などの身体症状、それから性欲や勃起力の低下などの症状が見られます。ただ、50歳前後に起こる閉経によって一気に女性ホルモン分泌量が低下する女性と違い、男性では、いつ頃、何が原因でどれくらいテストステロンの値が下がるかには個人差があります。若くても、仕事や私生活で強いストレスを受けたことで大きく下がることもあれば、高齢者でも比較的テストステロン値の高い状態を維持していることもあります。LOH症候群が最も多く見られるのは40代後半から50代ですが、早い例では30代でもあてはまる人も出てきています。
テストステロンは、男性にとってのガソリンのようなものです。ガソリンをたくさん使ういわゆる「アメ車」がガス欠しやすいように、若い頃は疲れ知らずで人の何倍も働いていたような男性など、おそらく元気な時にテストステロンがたくさん出ていたと思われる精力的なタイプの人ほど、テストステロンの分泌量が下がったときのダメージを強く受けやすい傾向があります。一方、もともとの男性ホルモンが低めの人は、年をとってテストステロンが少なくなってもその下がり幅が少なく、低燃費の車と同じで、それなりのパフォーマンスが維持できるようです。