男性のからだに特有の病気として、前立腺や精巣など男性生殖器の疾患がある。男性生殖器は、普段から本人が目にしたり触れたりする機会も多いため、日頃のチェックで異常を発見しやすいと言える。また、乳幼児期から思春期にかけての疾患は将来の妊孕性(にんようせい。子どもをつくる能力のこと)に影響を及ぼす可能性もあるため、男児の保護者であれば、その立場からも適切な処置を覚えておきたい。これらの病気を診察するのは主に泌尿器科となる。男性の主な病気や受診の目安など、知っておきたい基礎知識を、泌尿器科医で聖隷浜松病院リプロダクションセンター長の今井伸医師にうかがった。
男性生殖器の構造
【男性生殖器の詳細に関しては、「性知識イミダス:男性の生殖器を知ろう」をご覧ください】
思春期に起こる突然の陰嚢の激痛は早急に受診を
女性より男性に多い病気はいくつかありますが、「男性に特有の病気」というのであれば、男性生殖器に関連する病気ということになると思います。何か気になる症状があれば、基本的には泌尿器科を受診してください。
どの病気にかかりやすいかは、年代によって違います。乳幼児期に気をつけないといけないのは、精巣が陰嚢(いんのう)の中に降りてこない「停留精巣」、陰嚢がふくらむ「陰嚢水腫(すいしゅ)」です。思春期頃になると夜間に突然、陰嚢が激しく痛む「精巣捻転(ねんてん)症」などの病気も要注意です(それぞれの疾患の詳しい説明は「性知識イミダス:男性特有の病気~男性生殖器が関わる泌尿器科系疾患について知ろう(基礎知識編)」を参照。以下同)。
まず、停留精巣は放置しておくと後々の妊孕性に影響したり、「精巣がん」などのリスクが上昇したりする可能性があります。男児は通常、胎児のうちに生殖腺が精巣へと成長し、腹部から鼠径(そけい)部、陰嚢へと下降してきます。精巣の下降が不完全で陰嚢内に触知しない状態を停留精巣といい、出生時には5%前後にみられますが、生後6カ月までは自然下降することも多く、1歳頃には1.5%前後まで少なくなります。したがって、1歳頃になっても、陰嚢の中に精巣が見られないときには手術が勧められます。