陰嚢水腫は、停留精巣ほど将来に影響が出るというわけではないものの、乳幼児期は陰嚢の腫(は)れなどの状態に保護者が気をつけてあげて、症状が強く出ているようなら、泌尿器科で診てもらうとよいと思います。
早急に受診してほしいのは、思春期前後の男児が急に陰嚢部痛を訴えた場合です。その代表的な疾患が、精巣から腹部へとのびる精管や血管、神経などが束になった精索(せいさく)という部分がねじれる精巣捻転症です。突然激しい陰嚢部の痛みで始まり、だんだん陰嚢部が腫れてきます。その痛みを例えるなら、野球のボールが精巣に当たったときのような痛みがずっと続く感じです。発症するのは夜間の睡眠中が多く、下腹部痛や吐き気、嘔吐を訴えることもあります。
子どもは恥ずかしがって親に言わなかったり、「おなかが痛い」としか言わなかったりするケースもあります。放置すると男性不妊につながる可能性もありますし、ひどければ精巣が壊死(えし)して萎縮し、摘出しなければならなくなります。緊急でねじれを戻す手術を行いますが、応急処置として医師が手で精索のねじれを戻してしまうこともあります。とにかく病院に来てくれればすぐに治りますので、ぜひ早く受診してほしいと思います。なお、手でねじれを直したときは、後ほど改めて、精索が再びねじれないよう固定する手術を行います。
包茎は「病気」なのか?
「仮性包茎」(普段は亀頭〈きとう〉が包皮をかぶっていて、包皮を手で引っ張れば亀頭が露出する状態)は病気ではなく、治療する必要はありません。実際、日本人男性の70~90%が仮性包茎ですから、むしろ「普通」の状態と言えます。仮性包茎は、健康や性交の面でも、何も問題はありません。もっとも、中高年に比べ最近の若い世代はあまり気にしていない印象です。
医学的に「包茎」と見なされるのは、包皮を十分に剥けず亀頭を露出できない「真性包茎」です。男の子は生まれたとき真性包茎の状態で、多くは成長とともに包皮が剥けるようになりますが、中には二次性徴後も真性包茎の人がいます。真性包茎で注意してほしいのは、亀頭とペニスの境目(冠状溝〈かんじょうこう〉)に垢(恥垢〈ちこう〉)がたまりやすくなることです。不潔な状態が続くことで炎症(亀頭包皮炎)を繰り返し、包皮が硬くなって出口(包皮輪〈ほうひりん〉)が狭くなり、尿が糸のようにチョロチョロとしか出なくなる状態に発展したり、「陰茎がん」の原因になったりするとも言われています。
亀頭包皮炎も陰茎がんも、局所を清潔にしていれば予防できます。まずは包皮を剥く練習をして、冠状溝をちゃんと洗えるようにします。最初はうまくできなくても、だいたい3カ月ぐらい練習すれば、ちゃんと包皮が剥けるようになります。やり方がわからないときは、泌尿器科で教えてくれますので、相談してみましょう。
小児期に親が包皮を剥くことに関しては賛否両論がありますが、小さい頃は包皮と亀頭が癒着していることが多く、無理矢理剥こうとすると出血したり、子どものトラウマになったりすることもあるので、嫌がる場合は無理をしないでください。思春期頃にはだいたい自然に剥けるようになっていくので、義務感にとらわれる必要はありません。