射精直前までは外尿道括約筋も締まった状態であるため、精液は射精の瞬間まで充填され、たまり続ける。
「糖尿病の患者さんなどで、『逆行性射精』という射精障害に悩んでいる方がいます。糖尿病に由来する神経障害のせいで脳からの指令が伝わりにくくなり、内尿道括約筋が締まりにくくなることで、精液が膀胱側に逆流してしまうのです」(小堀先生)
●第3段階
性的興奮が頂点に達すると、前立腺、精嚢周辺の筋肉が規則的に収縮し、その律動によって精液は尿道に押し出され、外尿道括約筋がゆるんでペニスの先から勢いよく放出される。射精後、プロラクチンとドーパミンというふたつのホルモンのはたらきにより、不応期(ここでは性的衝動が急激に低下する状態、いわゆる「賢者タイム」のことを指す)が起こる。
1回の射精では、ほぼ小さじ1杯(3ミリリットル)の精液に交じり、2億~5億個の精子が放出される。精液のほとんどは前立腺液と精嚢液で、このうち精子が占める割合は数パーセントであり、精子数の個人差も大きいため、精液の量から精子の数を判断することはできない。射精された精子の寿命は約3日間で、女性の腟内はもちろん、空気中でも生存できる。
「射精できても、その中に精子がいるか、いないかということは見ただけではわかりません。たとえば、男性避妊のためのパイプカット(精管結紮)の手術では、精管の根元にあたる部分を縛って精子が通れないようにします。前立腺や精嚢、ペニスなど、射精にかかわる他の器官に影響はないので射精はできますが、出てくるのは精子が含まれていない精液だけということになります。これは無精子症の場合でも同じです」(小堀先生)