特徴:卵巣にできた腫瘍(卵巣腫瘍)のうち、80~90%は良性の卵巣嚢腫(のうしゅ)と考えられ、20~30代に多い。最も多いのは卵巣に水がたまる漿液(しょうえき)性嚢腫だが、粘液がたまる粘液性嚢腫、細胞が脂肪や髪の毛、歯などの形になって腫瘍化する皮様(ひよう)嚢腫(奇形腫)などもある。古い血液が卵巣にたまるチョコレート嚢胞は、正確には子宮内膜症の一症状だが、卵巣嚢腫の一種でもある。卵巣嚢腫が大きくなるまで自覚症状はほとんどないため早期発見しにくい。下腹部に痛み、張り、違和感を覚えたら早めの受診が適切な治療につながる。
症状:卵巣嚢腫が大きくなると痛みや下腹部に張りや違和感を感じる。また、卵巣と子宮をつなぐ部位などが嚢腫の重みでねじれ、元に戻らなくなる茎捻転を起こし、激しい腹痛で救急搬送されることもある。
治療:特に症状がなければ、変化がないかどうか婦人科で定期的にチェックする。チョコレート嚢胞の場合はホルモン療法で症状を軽減させることができる。それ以外の卵巣嚢腫で治療が必要なときは、手術が選択肢となる。卵巣嚢腫のみ核出(かくしゅつ)し卵巣は温存する方法と、症状によっては卵巣ごと全て摘出する方法が検討される。ただし両方の卵巣を摘出すると急激にホルモンバランスが崩れ、更年期症状が出るため、ホルモン補充などアフターケアが大切となる。
子宮頸がん
【こんな悩みがある人は要注意!】おりものの増加/不正出血 など
特徴:最も患者が多いのは30代後半から40代で、20~30代の若い女性にも増えている。セックスで感染するHPV(ヒトパピローマウイルス)が原因で子宮頸部(けいぶ)にがんが発生する。HPVの感染から5~10年ほどでがん化すると考えられている。なお、女性が生涯でHPVに感染する割合は全女性の80%以上と言われ、性行動にかかわらず、感染自体は特別なことではない。
がんになる前の状態(異形成)ではほとんど症状がなく、20歳以上の女性が対象の子宮頸がん検診による早期発見が重要となる。子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんであるため、検診で見つけやすく、早期に治療すれば予後は良好である。予防には子宮頸がんワクチンが有効で、公費で受けられる「サーバリックス」(商品名、以下同)(2価HPVワクチン)、「ガーダシル」(4価HPVワクチン)で子宮頸がんの60~70%が予防できる。より効果が高い「シルガード9」(9価HPVワクチン)は90%以上の予防効果があると言われるが、現時点では自費での接種となる(2022年3月時点、公費接種については厚生労働省が検討中)。一時、子宮頸がんワクチン接種後に手足の動かしにくさや不随意運動(からだの一部が勝手に動いてしまう症状)など多様な症状が表れるとされ、調査が行われた結果、接種との直接の因果関係は証明されなかった。接種時の痛みや周囲の環境のストレスなどが体調不良の要因になっている可能性があり(ワクチン接種ストレス関連反応)、支援診療体制を整備している。なお、ワクチンを接種していても、定期的に検診を受けることが必要である。
症状:初期はほとんど症状がない。進行すると、おりもの(帯下〈たいげ〉)の増加などの異常、不正出血、下腹部痛などが見られるようになる。なお、性成熟期の女性に多く見られる子宮腟部びらん(腟〈ちつ〉にただれのように見える場所がある状態)は病気ではないが、子宮頸がんの初期であることもあり、不正出血など症状が出たら早めに検査を受けることが望ましい。
治療:早期に発見した場合は、円錐切除術をおこなうことで子宮を温存することができる。進行すると子宮全摘手術が基本となり、必要に応じて放射線治療、化学療法が行われる。妊娠を希望する場合、 がんの進行度合いが初期であれば子宮を温存しての手術 (広汎子宮頸部摘出術)を検討するが、子宮頸部が切除されるため、流産や早産のリスクに注意が必要となる。
子宮体がん
【こんな悩みがある人は要注意!】不正出血/色のついたおりもの/下腹部痛 など
特徴:子宮体部(たいぶ)にできるがん。特に内膜に腫瘍ができる子宮内膜がんが最も多い。近年増加傾向にある。更年期以降の50~60代の女性に多いが、最近では30代の患者も見られる。不正出血があるときは年齢にかかわらず検査を受けることが望ましい。I型とⅡ型があり、子宮体がんの80%を占めるI型はエストロゲンの過剰分泌が原因と言われ、妊娠・出産経験がない(あるいは少ない)、肥満、糖尿病、高血圧、内膜増殖症、月経不順(無排卵性周期症)、エストロゲン製剤のみのホルモン療法を受けている人はリスクが高くなる。初期のがんで転移していなければ、手術で80%以上の患者の治癒が期待できるため、予後は比較的良好である。Ⅱ型は高齢者に多く、エストロゲンとは関係なく発生し、悪性度が高く進行が早いため、早期発見が重要である。
症状:不正出血、色(褐色)のついたおりもの、 下腹部痛、進行した場合は腹部膨満感など。
治療:基本は子宮摘出手術で、卵管、卵巣も切除することが多い。がんの再発や進行具合に応じて、化学療法、放射線療法が行われる。妊娠を希望する場合は、がんのタイプによっては、子宮を摘出せず、ホルモン療法も検討できる。
卵巣がん(卵巣悪性腫瘍)
【こんな悩みがある人は要注意!】腹部膨満感/下腹部痛/頻尿 など