特徴:卵巣にできる腫瘍のうち悪性の卵巣がんの多くは、主に40~60代女性が罹患する上皮性卵巣がんである。卵巣がんは「サイレントキャンサー(沈黙のがん)」と呼ばれ、初期は自覚症状がない。そのため発見されたときには、がんが進行していることも多い。有効な検診・予防法はなく、腹部膨満感や下腹部腫れなどの症状があるときの早期受診が非常に大切となる。家族に卵巣がんにかかった人がいる場合はリスクが上がると言われており、婦人科での定期的な検査を相談するとよい。
症状:初期は無症状。腫瘍が大きくなると、腹部膨満感、下腹部痛、頻尿などが見られる。
治療:手術と化学療法が行われる。妊娠を希望する場合は、片方の卵巣を残すことが可能かどうか、がんの状態に合わせて検討する。
卵巣出血
【こんな悩みがある人は要注意!】突然の激しい腹痛 など
特徴:排卵やなんらかの外的刺激により卵巣にできた傷から出血し、血液が腹腔内にたまる病気。若い女性に多く見られるが、排卵がある年齢の女性には誰でも起こりうる。月経前の黄体期に起こりやすく、セックス、不妊治療での採卵や卵巣手術、血液凝固異常なども原因となる。
症状:突然の激しい腹痛、吐き気、冷や汗など。出血量が多いと血圧が低下しショック症状を起こすこともある。
治療:安静、鎮痛薬投与などの対処療法を行い、血液を止めて、たまった血液が自然に吸収されるようにする。出血量がひどく多い場合は手術で止血を行う。
卵巣機能不全
【こんな悩みがある人は要注意!】無月経/月経不順/更年期症状/不妊症 など
特徴:なんらかの原因で卵巣がうまくはたらかず、女性ホルモンが分泌されなくなり、無月経となる病気。続発性無月経(これまであった月経が3カ月以上止まっている)は、過度のダイエット、極度の肥満、激しい運動や強いストレスなどが原因になる。。また、抗がん剤や膠原病(こうげんびょう)の治療薬、卵巣がん手術など治療が原因で起こることもある。
生まれつき卵子の数が少ないターナー症候群等の遺伝疾患などが原因の原発性卵巣機能不全は、思春期になっても第二次性徴が現れない、子宮が成熟しにくい、骨粗鬆症になりやすいなどの特徴がある。原発性卵巣機能不全におけるこれら症状の進行を防ぐため、15歳までに初経がない場合は早めに婦人科を受診することが望ましい。続発性、原発性にかかわらず、卵巣機能不全を1年以上放置すると治療が困難になるため、早めの対処が鍵となる。妊娠を望む場合は、卵子凍結等も含めた不妊治療が必要になることもある。
症状:月経不順から無月経に至る。大人の場合は更年期症状が起こる。
治療:ホルモン療法。LEP。漢方薬など。過度なダイエット等が原因の場合は生活習慣の見直しを行う。骨粗鬆症予防のためにカルシウム、ビタミンDの摂取も重要となる。
多嚢胞性卵巣症候群
【こんな悩みがある人は要注意!】無月経/稀発月経/不妊症 など
特徴:内分泌疾患のひとつで、ひとつの卵巣に小さな嚢胞(卵胞)が10個以上発生して卵胞の発育に時間がかかり、なかなか排卵しないなどの排卵障害を起こす。なんらかの原因により性ホルモンの分泌がアンバランスになることで、初経時から稀発(きはつ)月経など月経周期の異常が続いたり、男性ホルモンや、脳下垂体から分泌される黄体化ホルモン(LH)の値が高く出たりする。生殖年齢女性の5~8%に存在し、しばしば不妊症がきっかけで見つかる。肥満は病気を悪化させる原因になる。
症状:無月経、稀発月経など月経異常。多毛、肥満など。
治療:肥満がある場合は、減量など生活習慣の改善が必要となる。ホルモン療法が基本となり、LEPが併用されることもある。妊娠を希望する場合は、排卵誘発剤を併用するなどして排卵を支援する。
子宮頸管ポリープ
【こんな悩みがある人は要注意!】不正出血/膿のようなおりもの など
特徴:30〜40代に多く見られる、子宮頸管の粘膜が増殖してできる良性の腫瘍。感染症や女性ホルモンなどが原因と考えられているが、はっきりとはわかっていない。まれに悪性化するため、大きくなるときは切除して検査することもある。
症状:自覚症状はほとんどない。不正出血が出ることや、ポリープによって感染症が起こると膿(うみ)のようなおりものが出ることもある。
治療:自覚症状がなければそのまま様子を見る。不正出血やおりもの異常など症状がある場合は、ポリープを切除する。
子宮内膜ポリープ
【こんな悩みがある人は要注意!】不正出血/過多月経/過長月経/貧血 など