―― 一口にDSDといっても色々な状態があり、原因もそれぞれだということですね。
医学的には「性染色体異常に伴う性分化疾患」「46,XY性分化疾患」「46,XX性分化疾患」の大きく3つに分類されていますが、おっしゃるようにDSDとなる原因やその表れ方は多岐にわたり、特定の遺伝子によることが判明しているDSDもあれば、原因がわかっていないDSDもあります。
これだけ多様ですので、患者さんやそのご家族の多くは「自分はDSDだ」というより、「自分は○○だ」と、あくまで個別の症状として認識されていると思います。DSDは約5000人に1人の割合で起こるとも言われますが、これはおそらく海外のデータで、日本ではほとんど統計はとられていないと思います。今述べたように、DSDといっても非常に範囲が広いので、どこまで含めるかというところも難しいのです。
たとえば「尿道下裂」という症状があります。通常なら陰茎の先端まで達する尿道の形成が途中で止まり、出口(尿道口)が陰茎のどこかにできるというものです。300~1000人に一人の割合で発生すると言われていて、1歳前後から、陰茎の先端まで尿道を作る手術を行います。尿道下裂は、なんらかの理由で男性型外性器の形成が典型的な道筋をたどらないという点で、実はDSDに分類されます。ただ、外性器が男性型で精巣もあり、検査をすれば染色体核型も男性型なので、出生時の性別は男性が選ばれますから、医療者も含めて尿道下裂がDSDという認識はあまりないのではないかと思います。