布施祐仁に聞く
元山仁士郎(聞き手) そもそも主権というのは、どういうものですか?
布施祐仁 主権とは、「自分たちの国の事を自分たちで決める」ということだと思います。特に私が重要だと思うのは、軍事的主権、つまり、「戦争をするかどうか」「戦争に参加するかどうか」という非常に重大な決定です。その決定で国民の多くの命がかかわってくる。そういう決定を自分たちの国の意思で行うかどうか、ということは、非常に重要だと思います。けれども、残念ながら、いまの日本は、その軍事的主権すらも、アメリカに委ねてしまっている。放棄してしまっている状態なんですね。例えば、アメリカが北朝鮮と戦争を始めた場合、日本にある在日米軍基地は、自動的に、米朝戦争の兵站(へいたん)拠点になります。つまり、日本国政府の、あるいはその主権者である私たち日本国民の意思とは関係なく、ほぼ自動的に米朝間の戦争に日本が巻き込まれていく。こういうことで本当にこの国の平和や国民の命を守り抜くことができるのか。それが、いま大きく問われているんじゃないかなと思います。
伊勢崎賢治に聞く
殿垣くるみ(聞き手) 本のタイトルにもある主権と言う言葉なんですけど、主権ってなんですか?
伊勢崎賢治 僕はもともと理科系なので、いわゆる国際政治の基本的な学術的な勉強はしていません。しかし、主権がゼロから誕生するという場面には、実務家として関わっています。僕なりに言いますと、主権というのは、ある領土の中に住んでいる人たちの、安全と平和を自ら担える政権、政府があるということ。いわゆるガバナンスができるということですね。それが基本です。
もう一つの主権の問題ですが、もし国家が持っている実力組織が、戦争犯罪を犯した時に、その責任者・指揮命令系統に責を負わせる法律を持つ。つまり、自分の実力を国家として律する能力があるものを主権国家といいます。日本はそれを持っていないのです。実力組織があるのにその責任をとれない。主権というのは、北海道であろうが、本州であろうが、沖縄県であろうが、全ての人の問題です。主権問題を放っておくと、日本が危なくなる。日本の安全と平和が脅かされる、ということを訴えたいのです。主権が侵害されていてもアメリカがいるから平和なんだ、ということで今まで来ましたが、これからはそうではないということを警告したいのです。