旅客機に乗ると、機長は飛行状況に加えて、目的地への到着予定時刻をアナウンスする。これによってスケジュールを再確認する人も多いが、実際の到着時刻が大幅にずれたらどうなるか。
「予定が狂った!」と不満の声も出るだろうが、機長としてはあくまで予定を知らせただけで、到着を約束したわけではないと反論することになるだろう。
これと同じようなことが、「政府経済見通し」でも起こる。
政府経済見通しは、政府が翌年度の経済について、経済成長率や物価などの予測を行うもの。翌年度の予算編成を行う際の前提となるもので、予算の財務省原案に合わせて12月に公表され、翌年1月に閣議決定される。
日本経済を「巨大な旅客機」、政府を操縦桿を握る「機長」と考えよう。すると、政府経済見通しは、国民という「乗客」にこれからの飛行状況を説明するアナウンスに他ならない。
政府経済見通しの中でも、特に注目されるのが経済成長率だ。2007年度の経済成長率の見通しは、06年12月の段階で「企業部門、家計部門ともに改善が続き…自律的・持続的な経済成長が見込まれる」として、2.0%のプラス成長(前年度比、以下同)と発表された。
日本経済という旅客機が、順調に高度を上げて飛行すると、機長である政府は強気の姿勢を示したのだった。
しかし、これはあくまで見通しであり、実際の経済成長率がその通りになるとは限らない。07年度については、8月に+2.1%に上方修正されたが、その後12月には、住宅投資の急減などから、+1.3%に引き下げられてしまった。
当初は順調な飛行をアピールしていた機長だったが、「当機は強い向かい風の影響で、到着予定時刻から大幅に遅れます」と、釈明したというわけだ。
こうなると、「わざと甘い見通しを立てて、国民をだました!」「経済政策の失敗だ!」といった政府批判が展開されることになる。
しかし、政府としてはあくまで「見通し」であり、「公約」ではないと反論する。「到着が遅れたのは、機長の操縦に問題がある」という乗客のクレームに対して、「飛行環境の変化は不可抗力です」と抗弁するというわけなのだ。
08年度の「政府経済見通し」は、経済成長率を+2.0%としている。サブプライムローン問題などの乱気流が予想される中、かなり強気の見通しだ。
機長のアナウンス通りの飛行が達成できるのか?それとも「やっぱりダメでした」となってしまうのか…。政府の経済政策の手腕が問われることになる。