道路特定財源とは、道路の建設・維持の目的で徴収されている税金で、ガソリン税や自動車重量税などが財源になっている。その基本的な考え方は、税金を払った人が、その恩恵を受けることができるという「受益者負担」の原則。道路の利用者である自動車の所有者や運転者から税金を徴収、それを道路建設などの形で還元するというものだ。こうした「受益者負担」を原則とした税金には、空港整備に使われる航空燃料税、土地区画整理事業などに充てるための都市計画税などがある。
消費税や所得税など、その使い道が決められていない税金が「一般税」(普通税)と呼ばれるのに対して、道路特定財源のように使い道に制限があるものを「目的税」と呼ぶ。一般税が何にでも使える「学級費」なら、目的税は修学旅行などの特定の目的のために集められた「積立金」と考えられるのだ。
この道路特定財源を「一般財源化」しようという議論が活発になっている。道路建設に限定せず、社会保障費や教育費、そして、国の借金の返済など、どんなものにも使えるようにしようというわけだ。税収が思うように増えない一方で、支出は減らず、借金は増えるばかりで、日本の国家財政は火の車。こうした状況を受け、「学級費」が足りないので、修学旅行の「積立金」を取り崩して、穴埋めをしようということに他ならないのである。
道路特定財源の一般財源化に熱心だったのは、小泉純一郎元総理だった。道路特定財源を一般財源化することは、「修学旅行」を諦めるだけで、最終的には国民のために使うのだから、問題はない。むしろ、道路特定財源を使い切ろうとすることで、無駄な道路建設が行われていると考えたのだ。
道路特定財源は、その使途が限定されていることから、余ったとしても道路の整備や修理以外には使えない。これは、「積立金」が余ったので、飛行機はビジネスクラス、食事も一段と豪華にと、子供たちには不相応なぜいたくをさせるようなもの。それなら、不足している「学級費」に繰り入れ、学校全体の教育環境の改善に使うべきだというわけである。
これに対して、道路建設を促進してきた「道路族議員」は、建設業界のビジネスチャンスが減ると猛反発。自動車業界や石油業界などからも、「受益者負担」という目的税の大原則が崩されて不公平が生じることになり、道路建設以外に使うなら、税金そのものを廃止、あるいは軽減すべきだという声が強くあがったのだった。
しかし、こうした議論とは対照的に、税制度の全体で見た場合には、道路特定財源のような「目的税」へのシフトが高まっている。政府の無駄遣いが指摘される中、何にでも使える一般財源を確保するための増税は、なかなか理解が得られない。一方で、「目的税」を新設、あるいは、従来の税金を目的税化すれば、増税に理解が得やすいというわけだ。 こうしたことから、「環境税」の創設や、消費税を「福祉目的税」として税率アップを模索する、といった動きも出ているのである。
道路特定財源の金額は、2007年度予算で5兆6102億円と巨額だ。しかし、その使い道が効率的とは考えにくい。一方で、深刻な税収不足で、日本という学校は、深刻な学級費の不足に悩んでいる。日本という「学校」では、環境税、福祉目的税などの名目による、新たな「積立金」の負担増の一方で、大きな、そして無駄が指摘されている道路特定財源という「積立金」が継続されているのが現状なのだ。
厳しい状況が続く、日本の財政事情。「学級費」が不足する中、抜本的な税金システムの見直しが行われない限り、国民という生徒と親は、政府という学校から、過大な負担を強いられ続けることになりかねないのである。