「財政再建団体」制度は、財政破綻に陥った地方自治体の「リハビリ」だ。地方自治体の「倒産」ともいわれる財政再建団体への転落だが、清算されて消滅することが多い企業の「倒産」とは異なり、地方自治体はそこで暮らす人々がいる以上、消滅することは許されない。そこで、財政が破綻して倒産状態に陥った自治体は、国に対して財政再建団体の適用を申請し、その指導と援助を受けながら再建を目指すことになる。財政破綻という大けがを負った地方自治体が、国という医者の指導の下で財政の健全性を取り戻すための「リハビリ」を始めるというわけだ。
地方自治体が財政再建団体の適用を申請する基準となるのが、地方税や地方交付税などの一般的な財源である標準財政規模に占める赤字の割合だ。この割合が都道府県で5%、市区町村で20%を超えた場合、これ以上の赤字を食い止めるために、借金である地方債の発行ができなくなる。しかし、これでは行政サービスはストップし、職員の給与も支払うことができなくなる恐れがある。そこで国は、財政再建団体の適用を条件に地方債の新たな発行を認め、財政再建団体となった地方自治体は、国(総務省)の指導の下で財政再建計画を策定する。
最初の目標は歳出と歳入の均衡。これを実現しようと、歳入アップのための住民負担の増大、具体的には住民票の発行手数料といった各種手数料、公民館などの使用料、さらには国民健康保険料などの引き上げが行われる。一方で、歳出削減も徹底される。職員のリストラはもちろんのこと、学校や病院の建設費や維持費といった教育や福祉の予算、さらには道路整備など、生活に不可欠なものであっても徹底的に切りつめられる。
これらはすべて国の指導の下で容赦なく行われることから、「鉛筆一本買うにも、国にお伺いを立てる必要がある」と、皮肉交じりに言われることもある。地方自治体から「自治」の文字が消され、自主性が失われるのが財政再建団体なのだ。
厳しい再建計画が課せられる財政再建団体だが、同時に国からの援助も受けられる。地方自治体では、赤字を埋めるための地方債の発行、つまり借金をすることは原則として許されない。しかし、財政再建団体になればこれが認められて資金の手当てが可能となり、地方債の発行によって生じる利子の支払いについても、国が補助してくれるのである。
もちろん、財政破綻した地方自治体でも、財政再建団体にならず、自主的に再建を進めることもできる。この場合、地方債の発行は制限され、国による支援も受けられないが、自主性は残される。財政再建団体になるかならないかは、地方自治体に選択権があるのだ。しかし、自主再建の道は険しく、赤字の比率が地方債発行基準を超えた自治体は、財政再建団体の適用を申請することが多くなっている。
2007年に財政再建団体となった北海道夕張市は、メディアに大きく取り上げられ、地方自治体の厳しい財政事情を浮き彫りにした。地方経済が疲弊し、過疎化が進む中、「財政再建団体」に転落する自治体は今後も続くだろう。
しかし、重要なのは財政破綻してリハビリをするのではなく、それを事前に防ぐこと。税の配分を含め、地方自治体の財政の根本的な立て直しが、求められているのである。