知人が不満顔で言う。大手の出版社を退職してフリーランスになった途端、審査が厳しくなり、クレジットカードをなかなか発行してもらえなくなったというのだ。
クレジットカードを発行してもらう際には、安定した仕事と収入が重要な条件であり、フリーで仕事をしている人や派遣社員などには、高いハードルが設けられている。ところが学生の場合、親などの承認があれば簡単にカードが発行される。支払いができなくなった場合、本人に代わって親に請求できることが、学生の信用力を補っているのだ。
地方債が比較的簡単に発行(起債)できるのも、親に相当する国の後ろ盾があるためだ。「地方債」は、地方自治体が年度をまたいで借金をした際の「借用証書」で、国の借用書である「国債」の地方版である。
地方債については、償還、つまりその返済の財源を国が保障している上に、赤字が膨らんで返済ができそうにない地方自治体に対しては、地方債の発行を認めていない。さらに、地方自治体が企業の倒産に相当する財政再建団体に転落した場合でも、地方債を全額償還することを前提とした再建計画が策定されることになる。親である国の信用力があることから、子供である地方自治体も、簡単にクレジットカードが作れるというわけなのだ。
地方債を発行して借金ができるのは、公共事業や災害復旧事業などの資金を調達する場合に限定されている。したがって、歳入が不足しているからといって、職員の人件費といった通常経費を補てんする目的の、いわゆる「赤字地方債」は、国債の場合と同様に原則として発行できない。
しかし、厳しい財政事情の下、国が特例措置と言いながら恒常的に「赤字国債」を発行しているように、「赤字地方債」の発行も行われるようになってきた。「減収補てん債」と呼ばれるもので、税収が当初の見込みを下回った場合に発行される。これも本来は建設事業に限られていたのだが、厳しい財政事情を勘案し、2007年度については、特例として使途に制限のない「赤字地方債」の発行が容認されている。
財務省によると、07年度末の地方債の発行残高は199兆円に達すると見込まれている。国が保障してくれるという安心感から、地方債の購入者、つまり資金を提供してくれる投資家は多い。だが、その後ろ盾となっている国が発行する国債残高は607兆円。親と子どもを合わせた借金の総額、つまり国と地方の長期債務の合計は約773兆円(国と地方との重複分約33兆円を除く)と天文学的な数字になっている。
親子そろって借金漬けの日本。このままでは、子供である地方自治体はもちろん、親である国も信用力を失い、クレジットカードの発行を拒否されかねない状況なのである。