毎年、多くのプロ野球選手が、大リーグに移籍して行く。イチロー、松井秀喜、松坂大輔ら、スター選手が次々に日本球界を離れたことで、プロ野球の人気は大きく落ち込んでしまった。
「産業の空洞化」も、似たような現象と言うことができる。
近年、海外に生産拠点を移転する企業が急速に増えている。生産拠点が移転すれば、その分だけ雇用が奪われ、日本国内は寂れてしまう。これが「産業の空洞化」であり、選手が次々に海外へ出て行ってしまったプロ野球と同じ状況というわけだ。
「産業の空洞化」が進む最大の理由は、安い労働力だ。中国を始めとするアジアの国々では、日本に比べて労働者の賃金が安く、しかも大量の労働者を確保することができる。
もちろん、安いのは労働力だけではない。工場などを建設する際の用地取得や、建設にかかる費用も、日本国内より安い場合が多い。
激しい価格競争を強いられる企業にとって、日本国内で生産するより大幅なコスト削減を可能とする生産拠点の海外移転は、魅力的な選択肢であり、これが「産業の空洞化」をもたらすのだ。
また、急激な円高が、「産業の空洞化」を促進する場合もある。
日本で生産し、輸出をする場合、円高になると輸出代金の受取額が減少するなど、大きなデメリットが生じる。これを解消する手っ取り早い方法として、生産拠点の海外移転が選択され、「産業の空洞化」が進んでしまうのだ。
この他、日本国内に存在する様々な規制も一因だ。
日本には、無意味だと指摘される規制が多く存在し、ビジネスチャンスを奪っている。規制の緩やかな海外でビジネスを展開すれば、より大きなチャンスをつかむ可能性が出てくる。「日本にいると面倒なことが多い!」と、自由を求めて企業が日本を脱出、「産業の空洞化」へとつながってしまうのだ。
プロ野球の選手たちが、より大きな報酬と夢の実現が期待できる大リーグを目指すように、コストの面でもビジネスチャンスの面でも有利な海外に、企業が生産拠点を移転するのは当然の選択だ。
これを阻止するためには、日本を企業にとってもっと魅力的な国にすることが必要不可欠。これができなければ、企業の海外移転は続き、「産業の空洞化」は止まらないだろう。
「産業の空洞化」が進めば、日本経済はプレーの水準も低く、お客さんも少ないという寂しい状況になる恐れがある。
「日本でプレーしたい!」と日本人が考え、さらには、海外の企業が競って日本にやってくるような環境を早急に整えることが、求められているのである。