世界有数の経済大国となった日本は、自国のことだけではなく、世界的な視点に立って行動するべきだ、という考え方が定着し始めたからだ。
政府開発援助(ODA)は、国家レベルの「海外たすけあい」だ。先進国が発展途上国に対して行う援助の総称で、基本的な考え方は、その国の経済や社会の基盤整備のための資金を提供するというもの。食料がなくて困っている国に、食料そのものを提供するのではなく、食料生産を拡大するための耕地の整備や耕作機械の購入などに使われる資金を提供し、自立を促進しようとするものだ。
ODAで最も一般的なのが「二国間援助」だ。特定の発展途上国に対して、先進国が直接援助を行うもので、無償資金協力と有償資金協力がある。
無償資金協力は、文字通り無償、見返りを求めない純粋な援助だ。この中には、お金ではなく、技術者などを派遣して様々な指導を行う「技術協力」も含まれる。
一方、有償資金協力は、返済義務のある融資の形態を取る。借款とも呼ばれ、それが日本円で行われる場合には、円借款と呼ばれている。しかし、融資の条件は低金利で、返済期間も長期間と緩やかで、発展途上国の負担を可能な限り小さくしようとしている。
「二国間援助」に対して、複数の国を対象とするものもある。これが「多国間援助」で、提供された資金は、国際連合の機関である世界銀行や世界食料計画などを通じて、発展途上国に提供されている。
日本は2006年の時点で、アメリカ、イギリスに次ぐ世界第3位の額のODAを行っているが、かつては援助を受ける立場にあった。
太平洋戦争に敗れ、国土が荒れ果てた日本を復興へと導いた原動力の一つが、ガリオア・エロア資金と呼ばれたアメリカの援助。総額約18億ドル、現在の価値に換算すると12兆円、内9兆5000億円は無償という巨額の資金提供だった。この他、世界銀行からも8億6000万ドル(現在の価値で約6兆円)を受け、この資金を使って東海道新幹線や東名高速道路、黒部第四ダムなどが建設されていったのだ。
こうした援助への「恩返し」という意味合いからも、日本は世界でも有数のODA大国となった。しかし、相手国の事情を考えない「ばらまき型」で、コスト意識に欠け、一部の政治家や企業の不正な利益の温床になっているなど、様々な問題点が指摘されている。
この他、急激な経済発展を遂げ、日本のライバルとなりつつある中国に対して、ODAが続けられていることについても、疑問の声が上がっている。日本が権益の侵害だと訴えている東シナ海のガス田開発に、日本のODAが使われているという指摘もあり、見直しの声が高まっているのだ。
07年度の「海外たすけあい」の募金額は、「歳末たすけあい」を上回った。世界の一員という日本人の認識の高まりを示すものとも言えよう。
しかし、巨額の赤字を抱える日本の財政を考えれば、「他国を援助している場合ではない」というのが本音かもしれない。事実、最近の日本のODAの規模は縮小傾向にある。
国際社会の一員として、今後もODAを続ける必要はあるだろう。しかし、せっかくの援助が、本当に相手国の国民のために生かされるように、ODAのあり方については、厳しいチェックが必要なのである。