「2人はドラマでの共演をきっかけに交際を始め、現在はお互いのマンションを訪ねあう親密な仲に発展した…」といった具合に、2人の出会いから現在の関係、さらには将来の結婚の可能性などについても、憶測を交えながらセンセーショナルに伝えられることになる。
熱愛関係にある2人…。これを企業に置き換えると、資本提携となる。
「資本提携」とは、二つの企業が株式を持ち合って、強い協力関係を結ぶことだ。企業を分譲マンションに置き換えると、株式は一つ一つの部屋に相当する。したがって、それぞれが相手のマンションに部屋を持ち、頻繁に行き来するという熱愛関係を結ぶことが、資本提携となるのだ。
資本提携を結ぶ理由は様々だ。二つの企業が対等の立場で、お互いの良い面と悪い面を補完しあう場合がある一方で、どちらかの企業の経営が悪化し、これを助けるために資本提携が結ばれる場合もある。相手企業の救済の場合は、支援する企業だけが相手の株式を保有することが多い。
資本提携がさらに進むと、合併や経営統合へと発展する。「熱愛関係」から「結婚」へと進むわけだ。この場合、二つの企業の株式は統合され、一つの企業となって結婚生活が始まる。
しかし、資本提携がそのまま経営統合に発展するわけではない。その後の進展がなく、場合によっては提携解消に至ることもある。「熱愛」が「結婚」に至らず、「破局」してしまうというわけだ。
その一例が、富士重工業とゼネラルモーターズ(GM)の資本提携だ。両社は、1999年にGMが富士重工業の株式の20%を保有するという資本提携を結び、技術面などで協力関係を築いた。しかし、当初の見込みのような成果が得られず、GMの経営が悪化したことも手伝って資本提携を解消、両社の関係にはピリオドが打たれた。
ここで新たな「恋人」が出現する。トヨタ自動車だ。トヨタ自動車は、GMが手放した富士重工業の株式の一部を取得、資本提携を結んだのだった。
企業の買収も、相手企業の株式を保有するという点では、資本提携と全く同じだ。しかし、資本提携が相思相愛であるのに対して、企業買収は相手が嫌がっている場合も少なくない。買収相手企業が明確に拒否を示している「敵対的買収」は、「俺の愛人になれ!」と関係を強要しているようなもので、しばしば深刻な対立に発展するのである。
また、「資本提携」の前の段階もある。「業務提携」だ。こちらは株式を持ち合うことはなく、協力して商品開発を行ったり、仕入れ先を共通にして効率化を図ったりといった、実務的な協力関係を結ぶことをいう。ドラマで共演しただけであり、「お友達から始めましょう…」というのが業務提携なのだ。
「A社とB社が資本提携、将来の経営統合も視野に」。こんな見出しを見たら、「A社とB社が熱愛。将来の結婚も」と読み替えればよい。これが「結婚」に至るのか、「破局」してしまうのかは、その後の経営環境、そして経営陣の決断によるのである。