このマンションは、大地震で半壊したマンションが再建されたもの。この地震では多くのマンションが倒壊し、再建を断念したものも少なくなかったが、このマンションは再建を目指し、ようやく「再分譲」の日を迎えたのだった。
株式の「再上場」も、このマンションと同じと考えることができる。「再上場」とは、経営破綻で「紙くず」となるなど、上場廃止となった株式が再び上場され、一般投資家に販売されること。株式会社を分譲マンション、株式をその住戸、株主をマンション住民と考えるなら、経営破綻(倒壊)した株式会社(分譲マンション)を立て直し、新たな株主(住民)を迎え入れることが再上場である。
経営破綻した株式会社の多くは「清算」されて消滅するが、民事再生法や会社更生法などによって再建が試みられる場合もある。その場合は、再建を主導する「スポンサー」の下、徹底したリストラを断行、利益の出る部門に特化して経営を立て直す。
「スポンサー」となるのは、一般企業の他に企業再生ファンドや政府が担う場合もあり、経営破綻した企業に自らの資金や経営ノウハウを投入し、株式会社という分譲マンションの立て直しを図る。そして、黒字を計上するなど、経営再建が軌道に乗った時、再上場が試みられる。
再上場に際しては、利益や資産、将来性などが厳しく審査される。再建されたマンションの安全性や住み心地が、「新築」として売り出されるに足るかどうかがチェックされる。
再建を進めてきたスポンサーにとって、再上場は「終着点」だ。スポンサーは、再建企業の「オーナー」であり、その株式を保有している。この株式を一般投資家に売却し、その代金で投入した資金を回収して、再建された企業の経営は新たな株主に委ねる。スポンサーは再建したマンション(企業)の住戸(株式)を販売し、新たな住民(株主)に明け渡して、マンションから去って行く。
スポンサーにとって、再上場時の株価は、極めて重要だ。ある企業を3億円かけて再上場させたとする。その株数を100万株とすると、再上場時の株価が500円なら(100万株×500円=)5億円の売却代金が得られ、2億円のもうけが出る。しかし、200円なら売却代金は2億円で1億円の損失となる。再建したマンションがいくらで売れるかが、スポンサーの利益を左右するのである。
2010年11月、アメリカのGM(ゼネラルモーターズ)が再上場を果たした。経営破綻からわずかに1年5カ月、黒字企業となって株式市場に復帰した「新生GM」。最大のスポンサーはアメリカ政府で、オバマ大統領は「素晴らしい出来事」と成果を強調した。しかし、再上場時の株価33ドルでは投入した公的資金の全額回収は困難で、一層の業績回復で株価を押し上げる必要があるという。
日本でも日本航空が、12年末までの再上場を目指して再建途上にある。倒壊マンションを再建し、いくらで再分譲できるのか? 再上場の日を目指して、再建は続けられる。