上場が廃止される理由は大きく三つある。
東証1部の場合で見て行こう。最も多いのが、当該企業が経営破綻し、株券が紙くずになってしまった場合だ。サッカー選手が大きなけがをして、プレーが出来なくなった状態であり、即座に退場することになる。
また、時価総額(株価×発行株式数)が10億円以下になった場合や、発行株式数が4000株以下になった場合も、上場廃止の対象となる。成績があまりに悪い選手も、退場となるのだ。
第2の上場廃止の理由として、流通している株式数が、少数の人に買い占められて極端に少なくなった場合がある。東証1部では、少数の株主が発行済み株式の75%以上を保有している場合には、上場廃止となる可能性が出てくる。
こうした状況は、当該企業が買収された場合などに起こる。2006年3月にイオンに買収された、オリジン東秀などがその一例だ。限られた人が買い占め、実際に取引されている株式が少なければ、上場して売買する意味がなく、また、他の株主に不利益が生じる可能性もあるからだ。出場していても、ほとんどボールにさわらない選手も、退場になるというわけだ。
第3の上場廃止は、深刻なルール違反をした場合だ。サッカーで危険なプレーをした場合に出される「レッドカード」に相当する。株式市場でプレーする以上、決算報告などをルール通りに公開し、粉飾などの虚偽があってはならない。もし、ルール違反が発覚した場合、証券取引所は、その企業にプレーする資格がないと判断し、退場を命じることになる。これによって、06年4月にライブドアが、05年6月にはカネボウが上場廃止となったが、06年12月に利益水増しが発覚した日興コーディアルについては、注意勧告の「イエローカード」止まり。審判である証券取引所の判断で、適用が揺らぐケースもある。
上場廃止となった企業の株価は、通常大きく下落する。経営破綻した場合は当然だが、ルール違反による上場廃止の場合、退場する選手にけがはなく、単にプレーを禁じられただけで、当該企業の経営状態に問題があるわけではない。しかし、上場廃止されると、株式を売りたくても簡単には売れない状態となる。このため、企業の業績とは無関係に、上場廃止となる株式の価格は下落してしまう。
上場廃止によって株式市場から退場させられた企業にも、カムバックのチャンスは残されている。経営破綻しても、地道に再建を進めれば、再上場が可能となる。牛丼の吉野家や、新生銀行として生まれ変わった日本長期信用銀行などがその例で、けがを治してプレーができる体になったわけだ。また、ルール違反によって退場させられた、西武鉄道やライブドアも、企業体質を改めれば、再上場の可能性は残されている。
上場廃止は当該企業、そして投資家に大きな影響を与える。しかし、サッカーの試合で、反則が見逃されてしまえば、選手はやる気をなくし、観客も興ざめとなってしまう。株式市場におけるサッカーがフェアに行われるためには、断固とした姿勢で「レッドカード」を出す必要があるのだ。