中国の株式市場の中核を占めるのが「上海株式市場」だ。2015年5月末現在の時価総額は米ドル換算で5兆9038億ドル(国際取引所連合発表)、東京を抜いてアメリカのニューヨーク株式市場とナスダック市場に次ぐ世界第3位の規模を誇る。
上海株式市場の動きを示す株価指数が「上海総合指数」で、取引されている全ての株式について、1990年12月19日時点の時価総額(株価×発行済み株式数)を100としてその変化を指数化したもの。東京株式市場のTOPIXなどと同じ「時価総額加重平均型株価指数」であり、市場全体の動きを反映している。
中国の株式には、欧米や日本にはない特徴がある。その一つが「A株」と「B株」の2種類の株式の存在だ。原則として中国人のみが売買できる人民元建ての株式がA株、外国人が売買可能だが中国人には制限があるのがB株で、上海株式市場ではA株が取引の大半を占めている。国内からの出稼ぎが中心で、外国からの出稼ぎは制限されているのが上海株式市場なのだ。
こうしたことから、上海株式市場は、中国の個人投資家が取引の8割を占めている。機関投資家などの「株のプロ」が多い東京や欧米の市場とは対照的だが、これが株価変動を激しくしているという。お金の出稼ぎである株式投資は、成功すれば大きな儲けが転がり込むが、出稼ぎ先が倒産でもすれば、お金は命を絶たれて故郷に戻れなくなるなどリスクも大きい。このため、プロの投資家に比べて、経験の浅い個人投資家はパニックに陥りやすく、大慌てで株式を売って出稼ぎマネーを「帰郷」させようとするため、株価暴落を招きやすくなっている。
上海株式市場のもう一つの特徴が、政府の強い関与だ。日本や欧米の株式市場が、投資家の自由な取引に委ねられているのとは対照的に、上海株式市場では政府が取引に介入して、株価を支えることが多い。これが投資家の「甘え」を生んでいる。株価が急落すると、「政府は何もしてくれない!」と、大声で泣き叫ぶのが中国の個人投資家。政府が甘やかしてきた結果、投資家としては幼稚な人が多く、これが株式市場の健全な発展を阻害し、バブルの温床にもなっていると指摘されている。
中国経済の減速が見え始める中、大人気の出稼ぎ先だった上海株式市場から、お金が「帰郷」する動きが広がっている。これに伴って、株価も大きく下落したが、その影響は世界中の株式市場に波及している。「上海株式市場の下落は、中国経済の減速を示すもので、世界経済の先行きも暗い…」との不安から、世界同時株安を生んでいるのだ。
上海株式市場の前場は9:30~11:30で、後場が13:00~15:00(日本との時差1時間)。日本の株式市場と取引時間帯が重なっているため、「東京の株価が理由もなく急落した…と思っていたら、上海株式市場の下落が原因だった」などと、二つの市場の連動性が高まっている。大量の出稼ぎマネーに沸いてきた上海株式市場は今、大きな岐路に差し掛かっており、その動向に世界の投資家の目が注がれているのである。