デフォルトは、企業が発行する借用証書である社債やコマーシャルペーパー(CP)、政府が発行する国債などが取引される公社債市場で頻繁に登場する。
借り手の財政状況が悪化し、利息の支払いが遅延したり、最悪の場合は元本が返済不能になったりした場合に、デフォルトが宣告される。社債などがかかわらない、通常の融資の利払いや元本返済が滞った場合もデフォルトと呼ばれるが、企業が破綻して、発行されている株式が紙くずになった場合には使われない。デフォルトはお金を返済する義務という「債務」が「不履行」、つまり果たされなかった場合を示す言葉で、融資関係がない株式の場合には使われないのだ。
デフォルトが宣告されても、社債などが直ちに紙くずになるわけではない。デフォルトといっても、利払いが一時的に不能になったという軽度のものから、元本が完全に返済不能になるという深刻なものまで、様々なレベルがあり、元本の一部が返済される場合も少なくない。しかし、実際の公社債市場では、デフォルトが宣告されると、その度合いにかかわらず、その社債やCPは投げ売り状態となり価格は暴落してしまう。公社債市場において、デフォルトは事実上の「死刑宣告」なのである。
企業が破綻することで、その社債などがデフォルトに至るのが一般的な順序だが、逆の場合もある。まず公社債市場でデフォルトが発生、これが引き金となって、企業が破綻に追い込まれる場合も少なくない。企業が資金不足で破綻寸前になっていても、資金繰りの状況は、取引のある金融機関以外には分からない。ところが、デフォルトが宣告されて資金繰り悪化の実態が明らかになると、関係するすべての金融機関や取引先が一斉に資金の引き揚げに動き、結果として企業の息の根を止めてしまうのだ。
さらに、デフォルトが発生すると、その影響が公社債市場全体に広がる恐れがある。ある会社の社債がデフォルトになった場合、「次はあの会社がデフォルトするのではないか?」といった不安感が連鎖的に広がり、公社債市場全体が崩れることになりかねないのだ。
2001年にはアルゼンチン国債がデフォルトとなるなど、借金が返済できなくなれば、国が発行する国債でもデフォルトは起こりうる。08年に始まった世界的な金融危機の発端となったリーマン・ブラザーズの破綻では、同社のサムライ債(円建ての債券)がデフォルト、深刻な通貨危機に見舞われたハンガリーでは国債がデフォルト寸前に追い込まれ、IMF(国際通貨基金)からの緊急融資で何とか乗り切るといった事態も起こっている。
デフォルトが起こるたびに公社債市場は混乱し、その影響は経済全体へと波及する。デフォルトは公社債市場における「死刑宣告」であり、市場関係者が耳をふさぎたくなる言葉なのである。