住宅の購入を検討している人にとって、住宅ローン金利の動向は大きな関心事だ。とくに、返済期間が10年を超える長期のローンを固定金利で組む場合、一度決めてしまうと後戻りが難しいだけに、借りるタイミングが重要になってくる。
長期金利はどうやって決まるのか。金利とは「お金の価格」であり、一般の商品の価格と同様に、需要と供給でその水準が決まる。
一般の商品の場合、欲しい人が増加(需要の増加)したり、生産量が減少(供給の低下)したりすれば、価格は上昇する。反対に、欲しい人の減少(需要の低下)や生産量の増加(供給の増加)は、価格の下落をもたらす。
金利も同じだ。お金を必要とする人(借り手)が増えたり、お金の出し手(貸し手)が減れば金利は上昇し、反対に借り手が減ったり、貸し手が増えれば金利は低下する。
では、長期金利を決める借り手と貸し手は誰なのか。長期金利とは、返済期間が1年を超える場合の金利で、1年以内の短期金利と区別されている。短期の場合、お金の借り手は千差万別だが、長期の場合には限定されてくる。
個人にとって「一生の買い物」である住宅ローンのように、長期金利の資金を必要とするのは、製鉄や自動車などの大規模な製造業、1機数百億円する旅客機を購入する航空会社など、巨額の資金需要がある企業が中心だ。
こうした長期資金の借り手の中でも、圧倒的な規模を持つのが政府である。政府は、借用証書である国債を発行し、これを売却することで資金を調達している。財政事情の苦しい日本では、2008年度に126兆3000億円という天文学的な額の国債が発行される計画だ。
このため、国債が売買される国債市場には、資金の貸し手も集合し、結果的に、ここで決められる金利が、それ以外の長期金利の目安となっている。
つまり、国債の金利が事実上の長期金利となり、企業向けの貸し出し金利である長期プライムレートや、個人の住宅ローン金利も、これに連動しているのだ。
国債には、償還期限が1年以下の短期国債、2~6年の中期国債、10年から最長40年の長期国債など、いくつかの種類がある。中でも、長期金利の指標とされているのが、最も発行量の多い10年物の国債だ。そこで通常、長期金利と言えば、この10年物の国債(指標銘柄と呼ぶ)の金利を示すのである。
国債の金利も、資金に対する需要と供給で決まる。したがって、政府の財政が悪化し、国債の発行が増えれば金利は上昇、反対に発行が減少すれば金利は低下する。
また、将来金利が大きく上昇すると予測されると、それを先取りして金利が上昇してしまうこともある。
今、インフレが起こって、将来金利が上がる可能性が高まったとしよう。すると、住宅購入を検討している人が早めにローンを組むなど、資金需要が高まる。一方で、資金を貸す方は、将来金利が上がるのであれば、もう少し待った方が有利と考える。この結果、資金需要の増加と資金供給の低下が重なり、金利が上昇してしまうのだ。
長期金利が上昇すると、一番困るのは政府だ。国債の利払いが一段と増え、国家財政はますます逼迫(ひっぱく)する。もちろん、お金を借りようとしている企業も個人も同様に困る。
その一方で、預金者や、巨額の資金を運用している年金や保険会社など、資金を提供する側にとっては、利息の増加をもたらすことにもなるのである。
住宅ローンを組む予定のある人は、長期国債10年物の金利をチェックしよう。ここで金利が上昇すれば、遅かれ早かれ住宅ローン金利も上昇するからだ。そして、長期金利の先行きを予測するためには、最大の借り手である政府の財政事情の他、景気や物価などを総合的に判断する必要があるのである。