最近結婚した知人が、ため息をついている。熱烈な恋愛の末に結婚したのだが、結婚生活が始まると、それまで気付かなかった相手の欠点がいろいろと見えてきて、夫婦関係がぎくしゃくしているというのだ。しかし、相手を選び、結婚を決断したのは自分自身。「お見合い結婚の方がよかったかもしれない。第三者の冷静な目で、結婚相手を選んでもらえたから…」と愚痴る知人に、「自己責任だからね」と、友人達の視線は冷たい。
直接金融にも同じことが言える。金融とは、お金に余裕のある人が、必要としている人にお金を提供(融資)し、見返りとして利息や株式の配当などを受け取ること。ここで重要になるのは、お金を提供する相手の選択だ。
「直接金融」はその名の通り、融資先を自分で選んで、直接お金を提供することで、株式投資がその典型だ。数多くある株式の中から、「値上がりする」と予想した株式を自分の判断で選び出して購入、これによって相手に資金を提供する。お金の「嫁ぎ先」を自分自身で探し出す直接金融は、お金の「恋愛結婚」に他ならないのである。
直接金融には、株式のほか、企業の借用証書である社債やコマーシャルペーパー、国債や地方債など債券の購入も含まれる。東京証券取引所の1部に上場されている株式の銘柄だけでも1600以上、日本国内はもちろん、外国で発行されているものも選択の対象となることから、その数は膨大になる。日本人はもとより、外国人も含めた数多くの人の中から、理想の結婚相手を選ぶことができるというわけだ。
直接金融の利点と欠点も、恋愛結婚に通じるものがある。株式を始めとした直接金融は、成功すれば大きな利益を上げることができるが、投資先の企業が倒産、株式が紙くずになってしまうことも珍しくない。投資先を間違えると、夫婦仲が険悪になり、場合によっては離婚という深刻な事態に陥りかねないのである。
しかし、投資先を選ぶのは容易ではない。投資先の企業の業績や将来性、経営者の能力など様々な要因やデータを分析、「これだ!」という株式や債券に投資する。思惑通り株価が上昇すれば幸せだが、下がってしまうと「あんな株を買うんじゃなかった」と後悔することになる。しかし、購入する株式を選ぶのは自分自身で、すべては自己責任だ。思惑が外れて大損、「こんなはずじゃなかった…」と後悔することも珍しくないのだ。
こうしたことから、金融には、「お見合い結婚」に相当するものがある。「間接金融」だ。こちらは、銀行がお金を預かり、融資先を選んでくれる。お見合いのプロである銀行が、責任を持って「嫁ぎ先」を選んでくれることからリスクは小さいが、得られるのはわずかな利息のみ。直接金融のような大きな利益は期待できない。
日本の金融界では、間接金融が中心で、直接金融が主流の欧米とは対照的だった。しかし、近年では個人の株式投資が急増、企業も株式や社債を積極的に発行して資金調達を図るなど、日本でも直接金融の比率が高まっている。
「恋愛結婚」と同じく、「直接金融」にもよい面と悪い面がある。夢中になりすぎて、後で後悔することがないように、冷静に相手を選ぶことが肝心なのである。