キューバに暮らす若者たちは、その多くが今、グローバル資本主義の便利で華やかな部分に憧れ、その世界につながりたいと願っている。しかし、その世界が抱える本質的な問題を知る機会は少なく、矛盾が十分にはわかっていない。そんな彼らにとって、既存の社会主義でも資本主義でもない第3の道を思い描くことは、かなり難しい作業だ。
一方、世界が抱える本質的な問題を理解できていないという意味では、資本主義世界に生きる日本の若者たちの大半も、同じ状況かもしれない。グローバル資本主義の真っ只中にいながら、その矛盾を考える余裕すらないまま、歪みの中に閉じ込められているように見える。周囲の大人たちが、より人間的な社会の理想をほとんど語らないなか、若者たちは、資本主義的な競争社会の常識の枠から、なかなか逃れられない。周囲の世界のありように断固とした疑問を投げかける力を、得られずにいる。だから、異なる未来への理想を抱くことが、困難なのだ。
思うに、もし私たちが、誰もが安心して生きられる未来を本気で望むのであれば、グローバル資本主義にはそろそろ世界の表舞台から消えてもらわなければならない。社会的連帯経済を推進する人々から学び、極端な格差のない、人の暮らしと環境を守ることを軸にした経済を創り出すこと。移民排除ではなく、多様な人間が共生する民主的な社会を実現するための政治を行うことこそが、希望ある未来への道筋だろう。
もしもキューバが、革命が描いた理想と自らの現実のギャップを見つめ直し、世界全体を覆い尽くしている問題を熟知したうえで、真に自由で平等な社会への新たな革命を開始したならば、そのインパクトは1959年の革命以上のものになるかもしれない。
2020年を目前に、キューバの市民の間では、これまで続いたキューバペソCUPと兌換ペソCUCの二重通貨制が廃止されることや、賃金アップと引き換えに食料・生活必需品の配給制度をなくすことなど、様々な変化が議論されている。大学生の友人ユーヒは、相変わらず、そんな噂話に気を揉む日々を送る。変化の先に何があるのかは、まだ誰にもよくわからない。
しかし、私は信じたい。キューバで出会った若者たちが、21世紀の革命の担い手となることを。そして、彼らの歩みをこれからも追い続け、共に挑みたい。グローバル資本主義の荒波に揉まれながらも、その波間にすっと浮き上がり、新たな理想へと進む航海に。革命はまだ始まったばかりだ。