フードバンクの使命
2020年5月以降、県内の大学関係者との連携により、アルバイトができずに生活が苦しくなっている留学生を中心とする大学生への支援も実施してきた。パンデミックにより、フードバンク活動のニーズはますます高まっている。だが、現在、日本にはフードバンクに関する法制度がないため、フードバンクはどこもボランティア団体として活動しており、その運営は不安定だ。資金はもっぱら寄付や助成金頼みで、活動を継続するための苦労が絶えない。
フードバンクちばもその例外ではなく、2021年度からの3年間は県内全域の活動基盤を築くための助成金を得ているが、助成期間が終われば、また資金の調達方法を探らなければならない。代表の菊地さんは言う。
「国がフードバンクを制度化し自治体が予算を付けるようになるか、企業や生協、社協などと皆で運営資金を出し合うか、このフードバンク自体が収益の出る別の事業を並行して行うか。打開策は、その3つが考えられます」
菊地さんたちは、元レストランだった事務所建物に備え付けられている厨房を生かした事業など、いくつかのアイディアを検討している。知恵を絞り、活動の継続と発展に努力する裏には、こんな思いがある。
「フードバンクは、ただ食品を配っているだけのものではないんです」
フードバンクちばは、ワーカーズコープと社協、生協、企業、そして市民が一体となって社会を支える仕組みの一つだ。食べるに困る人には、食料を提供するだけでなく、困難の原因を突き止め解消するための支援につながり、地域の人々とともに安心して暮らせるようになってもらえることを目指す。
日本や世界各地のフードバンクの中には、食品を受け取る団体・組織に資金協力を求めたり、企業からの寄付や助成金を主な財源として活動するところもあるが、フードバンクちばは少し違う。助成金で活動基盤を充実させながら、あくまでも市民や地元の企業・組織との連携を軸に置いて、地域の連帯が生まれるような活動を展開する。そしてまた、市民への啓発活動として、食品ロスに関する講演会を開いたり、夏休みの中学生にフードバンクの取材をしてもらったりもしている。
菊地さんは、フードバンクへの思いをこう語る。
「フードバンク活動は、企業に食品ロスや貧困問題に気づいてもらうのと同時に、フードドライブを通して、地域の人々に、身近なところにある問題に目を向け、関心を持ってもらえるところに大きな意義があります。普通の人は、『生活困窮者』と言われても、『ご飯が食べられない人なんて、本当にいるの?』という感覚だと思うんです。でも、フードバンクに自分の家で余っている食品を寄付するということを通じて、問題に気づき、困った時はお互い様という、地域の助け合いの文化が育つのではないでしょうか」
フードバンクちば
設立年 : 2012年
人数 : 常勤1人、パート1人
事業内容 : 生活困窮者への食料支援
モットー : いのちをつなぎ、支え合う社会