市民たちが創る連帯経済には、3つの重要な考え方が反映されていると、カバジェーロは言う。1つは、文字通り「連帯」。そして、「贈与」と「生態系の維持」だ。
「贈与」とは、お互い様の精神で、特に見返りを前提としない助け合いを指す。既存の経済では、何か必要とされる商品やサービスを提供する場合、提供された側は必ずそれ相応の見返りを求められる。つまり、提供した側が被った「マイナス」は補塡されることを前提とする、取引の経済だ。これに対し、贈与は、いつか何かしらの恩恵はあるだろうとは思いつつも、とりあえず相手のニーズに応じて、見返りの前提なしに必要なものを提供する。「プラス」の積み重ねの経済。そこには必然的に、マイナスなしの「満たされた経済」が築かれる。これは、伝統的な先住民社会に見られるものだ。
「生態系の維持」は、サンクリストバルの「同盟者」たちが行っているように、地域の自然と共生し、土地や空間、環境すべてのバランスが維持される形で暮らすことにより、実現する。
現在、首都メキシコシティのような都会を含む全国あちらこちらで、これら3つの考え方を軸とする連帯経済の実践が見られると、カバジェーロは述べている。街中の空き地を利用した都市菜園を営む住民グループや地域通貨を使って地産地消の市を開く市民、小さな労働者協同組合形式の事業を起こし、直接民主主義的な経営の職場を創る人たちなど。誰もが目指すのは、地球環境を正しく理解することで人の命を守り、暮らしを真に豊かなものにするための経済、先住民の知恵を生かした経済の創造だ。
メキシコにおける動きは、この連載ですでに紹介したスペインの社会的連帯経済の実践者ら、欧米で活動する人々にも少なからず影響を与えている。
首都メキシコシティで、野菜や菓子、日用品、衣類など、自分たちが作ったものを地域通貨ミシューカ(Mixiuhca)を用いて交換する市を開く市民。通貨は「売買」ではなく、「信頼関係に基づいて必要なものを提供し合う」道具として使われている。撮影:篠田有史
連帯経済
様々な社会運動と結びついた形で、人々が連帯して、社会の分断や貧困を克服し、民主主義と平等の実現や、環境保護などを目指す活動を通して築く経済

スロー・フード
伝統的な食材や料理、質のよい素材を提供する小生産者らを守り、消費者に味の教育を進めることで、おいしく健康的で、環境に負荷を与えず、生産者が正当に評価される食文化を広める運動
