私立大その他・一人暮らし
〈気付いて欲しい事があります!上京し、一人暮らしの費用を決める際に自分のアルバイト収入プラス仕送りで生活費を計算していました。アルバイトが休業や無くなる先輩同様に、コロナの影響で、上京しスタート時点からアルバイトすら出来ない、アルバイトが無い状況の為、予定していた仕送りだけでは生活できない事態になっています。選択肢は、アルバイト分を全て仕送りを増額してもらう事しかありません。兄弟もいる為、仕送りが維持されるのか現状、自分ではアルバイトも出来ず何も手立てがありません。新入生も、アルバイトすら出来ずアルバイトが休業、無くなった方と全く同じ状況下にある事実を知って欲しいです。〉
これも「緊急!大学生・院生向けアンケート」の自由記述からの引用です。「気付いて欲しい事があります!」という言葉に、自分のような学生がいることを知ってほしいという気持ちがあふれています。
この学生は上京してからアルバイトを始める予定でしたから、まだアルバイトをしておらず雇用先から休業補償を得ることも不可能です。また前年度のアルバイト収入がありませんから、政府の学生支援緊急給付金の支給対象要件である「新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、その収入が大幅に減少していること」という条件にも、当てはまりにくいでしょう。
このように全国大学生協連の調査結果や学生たちの自由記述から、コロナ災害にともなって苦しむ学生の姿が具体的に見えてきました。また、政府による支援制度では、苦しんでいる多くの学生が救済されない現状も分かりました。
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政府による学生支援緊急給付金制度、そして20年4月からスタートした「大学等における修学の支援に関する法律」は、いずれも学生支援をする際に「住民税非課税世帯(所得が基準以下等で住民税が課税されていない)」かどうかを重視し、支援対象を選別する制度設計となっています。
これは、高等教育費について「学費を負担できる親には可能な限り支払ってもらい、親がどうしても負担できない子どもにだけ支援を行う」ということを意味しています。つまり「選別主義」と「親負担主義」を原則とした制度設計となっているのです。
しかし、「緊急!大学生・院生向けアンケート」や「学生生活実態調査」から見えてくるのは、教育費についての「選別主義」と「親負担主義」の限界です。親からの経済的支援が減少し、学生自身のアルバイトが学生生活を続ける上で死活問題となっているということは、もはや親の所得を基準として支援対象を選別する政策は、有効性を大きく失っていることを意味します。
奨学金にせよ、学費減免にせよ、現在の学生支援は親の収入を基準とした「選別主義」の原則を続けています。しかし、教育費の「親負担主義」の限界が明確となってきた以上、これからは「普遍主義」に基づく学生への支援が強く求められます。
親の所得による支援対象の選別をやめ、すべての学生を対象とする学費の値下げ・無償化、給付を原則とする奨学金制度の実施へと教育政策を転換すべきです。コロナ災害に苦しむ学生たちの姿は、今後の教育政策の在り方を指し示しているように思います。