2019年3月に相次いだ性暴力事件への無罪判決をきっかけに、性暴力の根絶・性暴力被害者との連帯を求めて始まり、日本全国に広がった社会運動のこと。毎月11日に花を手にして街頭に集まり、スピーチやプラカードを持って立つスタンディングなどのアクションで、性暴力に抗議する。自身の性暴力被害をスピーチで語る人も多いことから、日本における#MeToo運動の一種と称されることも多い。
●フラワーデモのきっかけとなった、19年3月の4件の無罪判決は以下の通り。
(1)3月12日、福岡地裁久留米支部での準強姦事件の無罪判決。社会人サークルの飲み会で、酩酊した女性に対して40代男性が性交に及んだ事件。同日に毎日新聞(安部志帆子記者)が報道した(20年2月5日には福岡高裁で逆転有罪判決。その後、上告された)。
(2)3月19日 静岡地裁浜松支部で強制性交等致傷罪に問われた事件の無罪判決。コンビニ帰りの女性に外国人男性が口腔性交させた事件。検察は控訴せず、無罪が確定。
(3)3月26日、名古屋地裁岡崎支部での、準強制性交等罪に問われた事件の無罪判決。19歳の長女に対して実父が長年にわたる性虐待を行っていた事件(20年3月12日名古屋高裁で逆転の有罪判決。その後、実父の上告が棄却され、有罪が確定)。
(4) 3月28日、静岡地裁での、強姦罪に問われた事件の無罪判決。12歳の娘に対し実父が性的虐待を行った疑いのある事件。4件の無罪判決のうち、この事件のみ性的行為の事実自体が認められなかった(20年9月に高裁で結審)。
これらの判決報道を受け、作家の北原みのり、編集者の松尾亜紀子らが「性暴力と性暴力事件の不当判決に抗議しよう」「花を持って集まりましょう」とツイッターで呼びかけ、19年4月11日に東京駅前の行幸通りに500人以上が集まった。当初、この日限りの抗議活動を予定していたが、主催者側で予定していた10名のスピーチが終わった後も飛び込みでスピーチに立つ人の列が途切れず、21時を過ぎた時点で「また来月も集まりましょう」とアナウンスがなされた。同日、東京での行動と連帯して大阪でもスタンディングが行われた。花を持って集まるのは、性暴力被害者に寄り添う「#WithYou」の意を表明するため。
19年5月には東京・大阪・福岡の3都市で開催。このとき、呼びかけ人が「フラワーデモ」と命名した。6月には北海道や長野など計12都市、7月には計15都市と全国から声が上がり、20年3月8日までに、47都道府県に運営組織ができた。全国に広がった要因の一つとして、全国紙、NHK、民放などの主要メディアから地方紙や地方局まで、デモの報道が頻繁になされてきたことが挙げられる。
20年10月時点で、全国でのべ1万2000人が参加。各地の主催者はほぼ女性で、それまでデモなどに参加した経験のない女性が始めるケースも多い。また、各地で性被害者支援活動を続けてきた女性たちが開催したり、世代や団体を超えて協力し合っている地域が多いのも特徴。いずれにしても、誰もが参加できるデモの場を担保するため、特定の団体・政党ではなく、個人としての主催、参加を原則としている。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、20年4月以降はシンポジウム形式のオンラインデモに切り替えるなどして開催を続けている。同年9月、性暴力被害支援に関連して杉田水脈衆院議員の「女性はいくらでも嘘をつくことができますから」という発言に抗議して、緊急オンラインフラワーデモを開催し、37都市のフラワーデモ主催者が参加した。同時に署名サイト「Change.org」で、杉田議員に発言への謝罪、撤回、議員辞職を求める署名活動を開始し、20年11月17日現在、13万8000筆以上の署名が集まっている。