家族のなかにケアが必要な人がいるときに、本来は大人が担うと想定されるようなケア責任を日常的に引き受けている18歳未満の子どものこと。病気や障害のある親、高齢の祖父母、幼いきょうだいなどを気遣い、家事、見守り、世話、感情面のサポート、通訳、トラブル対応などを行っている。中には、家計を支えるための労働や医療関連のケアをしている子どももいる。18歳以上~30歳代で同じ状況にある人は「若者ケアラー(young adult carer)」と呼ばれる。
ヤングケアラーはケアに時間や労力を取られるため、勉強したり友達と遊んだりするなど子どもらしく過ごす時間が取れず、子ども自身の権利が守られないことがある。また、年齢や成長度合いに釣り合わない過度な負担から、心身の健康や人間関係などにも影響を受け、学校を休みがちになったり進路に悩んだりして社会的孤立につながる場合もある。
厚生労働省と文部科学省のプロジェクトチーム(PT)が2021年4月12日に発表したヤングケアラーの実態調査によれば、自分が世話をしている家族がいると答えたのは、中学2年の回答者の5.7%(17人に1人)、高校(全日制)2年の回答者の4.1%(24人に1人)。「いる」と答えた生徒のうち、ケアにかける時間は、中学2年で平日の1日当たり平均4時間、高校2年で3.8時間だった。1日に7時間以上という生徒も1割を超えた。
家族のケアのためにできないことを聞く質問に対しては、「宿題や勉強の時間が取れない」(中学2年で16.0%、高校2年で13.0%)、「自分の時間が取れない」(20.1%、16.6%)などの回答があった。「睡眠が十分に取れない」という回答も中学2年で8.5%、高校2年で11.1%もあった。さらに、ケアをしている家族がいる場合は、いない場合よりも健康状態が「よくない・あまりよくない」が2倍以上になったほか、学校の欠席や遅刻も多くなっていることが分かった。
ケアについて誰かに相談したことがあるかどうかを聞く質問には、「ない」という回答が中学2年でも高校2年でも6割を超えており、相談できないまま孤立を強いられているこどもが少なくないという状況が明らかになった。
イギリスでは1980年代末からヤングケアラーについての調査が始まり、2014年にはヤングケアラーへの支援を地方自治体に義務付ける法律も成立。その他の欧米諸国でもヤングケアラー支援の取り組みが始まっている。