「スーパーチャット(Super Chat)」の略称で、YouTubeのライブ配信における投げ銭機能のこと。
視聴者は配信者に、100円から5万円の任意の金額をオンライン上で贈ることで直接的に応援することができる。贈る金額に応じてコメント文字数が増加、色分けされ一定の時間目立つように表示される。例えば、500円から999円は150文字で黄緑色、2分間表示される。最大は5万円の350文字、赤色で5時間表示となっており、これは1日に贈ることができる上限金額でもある(24年現在の価格。OSにより手数料などで金額の変動あり)。
2017年にYouTubeでこの機能が導入され、コロナ禍でのイベント減少や外出自粛による巣ごもり需要でブームとなった。
2020年のスパチャ獲得世界ランキングトップ3はいずれも日本のVTuber(バーチャル・ユーチューバー)(註)であり1億円以上の収益を上げた。同年には、熱狂的なスパチャの応酬などのリアルなVTuber文化を描いた小説『ボクは再生数、ボクは死』(石川博品著 KADOKAWA)が刊行された。
日本においてスパチャによる投げ銭が高い支持を受ける理由は、“推し活”文化と相性が良いためとも指摘される。スパチャを贈ることは“推し”とのコミュニケーションを継続的にもちたいという視聴者の意欲までを喚起するようだ。
配信者にとっては、YouTubeの収益化条件の緩和もあり、今後スパチャ機能によって利益を得ることが増えてゆくと考えられる。地方自治体がスパチャを活用する例もみられるようになった。VTuberが、まちをPRする「まちスパチャプロジェクト」が2024年現在進行中だ。人気VTuberがまちの特産品や観光地を紹介。視聴者はライブ配信中のスパチャやふるさと納税で、VTuberとまちの双方を応援できる仕組みとなっている。
しかし一方で、「YouTube投げ銭機能『スパチャ』の利用に関する調査」(2024年4月、全国の20歳以上60歳未満の男女645人を対象に、法人SaaSの比較メディアUtillyが実施した)によれば、スパチャの認知率は48.7%と約半数に上ったが、その利用率は14%という結果にとどまった。スパチャに対する抵抗感がいまだにあることがうかがえる。
若者世代のスパチャを含めた投げ銭行為の問題も少なくない。ある小学生がライブ配信で投げ銭をするために親のクレジットカードを無断で使用し、30万円以上の請求があったという。国民生活センターはそうした事例を紹介し、投げ銭によるトラブルに注意を呼びかけている。こうしたトラブルを避け、推しやお気に入りのコンテンツとの健全な関係性のもとでの投げ銭行為が求められる。
(註)
「仮想的」という意味の「Virtual(バーチャル)」とYouTuberとを組み合わせた造語で、自身が出演するのではなく3DCGやイラストで表現されたキャラクターアバターの姿を用いて動画配信を行うYouTuberのこと。