ドキュメンタリーの形式を用いて作られるフィクション作品。「偽物の」を意味する「mock(モック)」と「実録」を意味する「documentary(ドキュメンタリー)」を組み合わせた造語。「フェイクドキュメンタリー」「擬似ドキュメンタリー」とも呼ばれる。
モキュメンタリーの映像演出では、インタビューやニュース映像の挿入、手ブレが多くキメの粗い映像、ナレーションによる進行といったドキュメンタリーの特徴をもつ。それらの特徴は、素人のような演技や洗練されていない撮影技術として現れるが、それがかえって臨場感や真実味を生む。そうした効果により、視聴者は虚実を曖昧にされた感覚になる。
諸説あるが、アメリカでは1950~60年代頃から「モキュメンタリー」という言葉は使われており、ドキュメンタリーの真実性を揶揄する意味合いもあった。
1990年代末頃から、デジタルビデオカメラが普及したこともあり、手持ちカメラなどを用いたドキュメンタリーの形式を持つモキュメンタリー作品は人口に膾炙(かいしゃ)した。
いまや広く知られるようになった、ホラー映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(ダニエル・マイリック、エドゥアルド・サンチェス監督、1999年)は、全編手持ちカメラで撮影され、登場人物たちが実際に耳にしているであろう音を加工せずに使用することで、真実味からくる恐怖感を増幅させた。低予算ながら莫大な興行成績を収めたが、「口コミ」によって爆発的な広がりをみせたという面でも画期的な作品である。
昨今、「モキュメンタリーホラー」というジャンルの作品が流行したことによって、モキュメンタリーという言葉は広く使われるようになった。さらに、モキュメンタリーという形式は映像作品に限らず、小説やルポルタージュなど広範にわたって用いられている。
なかでも、続編や文庫版と合わせてシリーズ累計発行部数250万部を突破した2021年刊行の『変な家』(雨穴著、飛鳥新社)は、間取り図やイラストといった視覚的情報によって、その家が実在するかのようなリアリティを物語に付与する。また、SNS上での「考察」や「謎解き」が作品の広がりを後押しした。
そんななか、2024年からはテレビ東京が『TXQ FICTION』と題する一連のモキュメンタリー番組を放送し、話題を呼んでいる。