射精障害の種類には「早漏」、精液が膀胱(ぼうこう)側に逆流してしまう「逆行性射精」、一切射精できない「射精不能」などがありますが、最近は特に「腟内射精障害」という、マスターベーションでは射精できるのに腟(ちつ)の中では射精できない状態が非常に深刻な悩みとなってきています。私が勤務する獨協医科大学埼玉医療センター男性不妊外来の受診者(2014年度)では、射精障害のうち53%が腟内射精障害でした。
ただ、こうした射精障害の受診者数は氷山の一角だと思います。『病院に行くほど困ってはいないけれど、射精がうまくできない』という人たちが、実際にはもっと大勢いるでしょうし、不適切なマスターベーションを覚えてしまい、将来の射精障害予備軍になってしまっている若い世代もかなりいるのではないかと予想されます。
ちなみに、勃起障害も射精障害も、治療は医療保険の適用外です。デリケートな領域なので、よほどせっぱつまらなければ受診しようとは思わないかもしれません。極端な話になりますが、パートナーがいない人やセックスをしない人は、勃起や射精ができなくても、おそらくそれほど切実に困ることはないでしょう。でも、将来子どもがほしいなら、ためらわず病院に行ってください。特に射精障害ではマスターベーションの方法など性の生活習慣が原因になっていることが多いので、治療を早期から始めることをおすすめします。
射精障害には勃起障害のような特効薬がなく、なかなか治りにくいケースもあります。それでも、希望がないわけではありません。必要な場合は別の分野の専門家を紹介するなど、いろいろな方法も取れるので、あきらめないでほしいですね。
Q1. 高校生になりましたが、一度も射精できたことがありません。自分だけおかしいのではないかと不安です。
初めての射精のことを「精通」といいます。女性には医学上、「15歳で初潮(初めての月経)がなかったら治療したほうがいい(遅発月経)」という判断基準がありますが、男性にはありません。
男性は思春期になると、男性ホルモンのひとつであるテストステロンの分泌量が急増し、陰嚢(いんのう)が大きくなって、精巣で精子がつくられるようになります。テストステロンの分泌が十分でないと、精巣で精子はつくられず、精通が起こりません。思春期が始まる時期には個人差もあるので、高校生ならしばらく様子を見ていたら精通が起こることもあります。
精通が遅いのではないか、もしくは陰茎や精巣が小さいのではないかと不安だったり、そのことが原因で、学校生活などで困っていたりするのであれば、一度、泌尿器科で相談してみてください。性腺機能低下症という病気が隠れている可能性もあります。治療では、精巣の発達状況などを確認しながら、必要があれば下垂体ホルモンの代用となる薬剤を投与し、テストステロンの分泌を促すこともあります。
また稀に、身体の問題で射精自体ができない「射精不能」という状態の人もいます。原因がわからないことも多いのですが、不妊治療の面からいえば、精子さえつくられていれば、手術で精子を取り出し、受精させることも可能です。成人しても射精ができないという人は、受診をおすすめします。
Q2. 50代になってから、なかなか勃起できなかったり、セックスの途中で萎えてしまったりすることが増えてきました。老化なのでしょうか?
「満足のいく性行為に十分な勃起を達成できない、もしくは維持できないこと」ことを、勃起障害(ED)といいます。症状としては、単に勃起しないだけではなく、性交中に勃起状態を維持できず、「中折れ」してしまう、挿入できるほど硬くならないといったことも含まれます。
若くても勃起障害にはなりますが、中高年になるほど確率が高まる傾向があります。
勃起しにくくなる理由として、ひとつには血管の問題があります。