・初期中絶
日帰りまたは1泊で手術を行う。多くの場合、静脈麻酔(全身麻酔)を行って手術が行われる。手術のみの所要時間は5~10分程度。
手術後は、2~3時間休んで帰宅する。麻酔の影響が残る可能性があるため、帰宅時は自分で車を運転しないこと。手術当日~数日間は重労働や激しい運動などは控える。
一般的に手術後数日間腹痛が続くことがあるため、痛み止めが処方される。また、性器出血は1~2週間以上続く。発熱や大量の性器出血が起きた場合は、早めに受診する。
手術費用は約10~20万円(保険適用外のため自費診療)。
手術の方法には以下の3種類がある(採用する方法は医療機関ごとに異なる)。
(1)手動真空吸引法(MVA)
子宮の中に細く柔らかいカニューレ(管)を入れ、プラスチック製の本体を引くと陰圧がかかり妊娠の組織(胎のうなど)が吸引される。子宮に愛護的で、電力供給の必要がなく簡便であることから海外では1970年代から普及し、約100カ国で使用されている。日本では2015年にMVAキットが認可された。電動真空吸引法や掻爬法に比べて痛みが少ないため、静脈麻酔(全身麻酔)ではなく、局所麻酔で行うことも可能。術前に子宮口を開く処置は基本的には不要。
(2)電動真空吸引法(EVA)
子宮の中に金属製の吸引管を入れて、電動で妊娠の組織を吸引する。掻爬法を併用することもある。未経産婦の場合などは術前に子宮口を開く処置をした上で行う。
(3)掻爬(そうは)法(D&C)
鉗子(かんし)という金属製の器具で妊娠の組織を子宮の外へ排出し、その後、キュレットという金属製の器具を使って子宮内に残っている組織を掻き出す。未経産婦の場合などは術前に子宮口を開く処置をした上で行う。
※WHOは安全な中絶の方法として、経口中絶薬(日本未承認)または真空吸引法(電動または手動)を推奨している。掻爬(そうは)法は、まれに子宮穿孔や子宮腔内癒着症、不妊症を生じることから、WHOは「時代遅れで行うべきでない」と勧告し、訓練を受けた施術者によって行われた場合でも安全性は低いとしている。
・中期中絶(妊娠12週以降22週未満)
数日から1週間程度の入院で行う。子宮口を開く処置を1~2日かけて行った上で、子宮を収縮させる錠剤を腟に入れて人工的に陣痛を起こし、数時間~1日かけて分娩をする。分娩後は、乳汁分泌を抑える薬を服用する。分娩翌日、または数日休んで退院する。一般的に分娩後数日間腹痛が続くことがあるため、痛み止めが処方される。また、性器出血は1~2週間以上続く。発熱や大量の性器出血が起きた場合は、早めに受診する。
市区町村の役所に死産届を出し、胎児の埋葬許可証をもらうことが必要。
分娩費用は約40~60万円(保険適用外のため自費診療)。出産育児一時金の対象となり、約40万円が健康保険組合から医療機関に支払われるので、医療機関に確認を。この他、埋葬料として約2万円がかかり、入院費用や証明書代などの別途費用がかかることもある。
「初期、中期ともに、基本的に約1週間後に受診していただき、医師が経腟超音波(エコー)検査などを行い、中絶が完遂したかどうかを確認します。
早ければ中絶から2週間後に排卵が再開し、妊娠する可能性があります。経口避妊薬(低用量ピル)は、中絶当日からも服用することができます。子宮内避妊具(IUD/IUS)は、中絶が完遂したことが確認できたら子宮内に装着することができます」(遠見先生)